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アトピーと保湿 〜成人と小児(乳幼児)の違い〜 [アトピー・湿疹対策]

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おなつ様からコメントで質問をいただきましたが、
私は医師ではないし、症状を見れるわけでもないので、的をはずした回答になりがちだと思いますので、ここしばらく個別の相談コメントへのご回答はやめております。なにとぞご了承ください。m(_ _)m

そのかわり、自分の経験と仕事のバックグラウンド(基礎医学、免疫学)に基づき、
一般的なこと(教科書レベルの情報)からやや踏み込んで
「まだ医学の教科書には載っていないが、今まさに動物実験や臨床論文で結果や証拠が出つつあること、これまでの研究結果を踏まえた科学的な予測」
については、書いてもいいかな、と思っています。

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ご質問

5ヶ月の息子がいます。最近になり、膝の裏にポツポツと赤くなってきてアトピーらしきものが出てきました。お風呂も毎日ソープ付けて洗ってしまっていて、お腹はお風呂上がりだけ一部分真っ赤になっていたので、最近これが原因かもと思い、お湯に付けてだけにしたらマシになってきましたが、膝の裏は良くならず…今回昔のを読ませて頂いて色々と参考にさせて頂いこうと思うのですが、病院に行った方がいいと書いてあるのを見て、ステロイドわ使わないリンクに行ったのですが、古いからか見れず(泣 ) 10年程前に記載されたようなので、もしまだご存知でしたらもしよければ教えて頂けないかな?と思いコメントさせて頂きました。 私自身アトピー持ちで、どこに行ってもステロイド。。 ただ、いつもステロイド完治後更に悪化。そうどこに伝えてもダメでした。それでひとつ寝屋川にある皮膚科でステロイド塗らないところを発見してほぼ治ったのですが、そこは保湿はしない方針だったのが頭にあり、保湿せずきてしまい。最近新生児からの保湿がアトピー防止と言うのも読み、遅いかなと思いながら始め出した感じです。


<保湿について>

脱ステ医/非ステ医の中でも、保湿をするべきか否かについては意見が割れているようです。
もっとも、アトピーが重症で搔き壊しや浸出液があるような状態では
保湿剤は使えませんが。。。

正直、私にも「保湿剤依存」が起こる仕組みはよくわかりません。
ただ、一般的な生物学の知識として、「ホメオスターシス」という生物が備える機能があります。
「恒常性維持」と訳されます。
これは「生体を一定の状態にキープする機能」全般のことです。

恒温動物が体温を一定に保つ機能で、この言葉を説明することが多いですが、
例えば体温も、発汗も、ホルモン分泌、非常に多くの機能を含みます。

保湿成分の分泌にもおそらくこの調節機構があって、
保湿が足りてる=「保湿成分はもう足りてるから、自分で出さなくてもいーよね」と体が保湿成分の分泌を減らす(皮膚の湿度?か何かを分子的に感知して、かな?)、というのは理解しやすいかと思います。
だから、保湿剤を毎日塗っていると、体は皮脂などの保湿成分を作るのをサボり始めるわけです。
で、急に保湿剤をやめたりすると、皮脂の生産量はすぐには戻せませんから、思いっきり乾燥してしまい、「やっぱり保湿剤塗らなきゃツライ!」となって、いつまでたっても乾燥肌(or アトピー)から卒業できない。

(ただ、この説明が「保湿剤を塗っている間はアトピーが治らない」という人の症状を全て説明できる、とは思いませんが、、、あたらずとも遠からず、少なくとも一部の人には当てはまるのではないでしょうか。)

藤澤先生によれば、「脱保湿をしないと、脱ステの成功率は約2倍違うかんじ」だそうなので、
「どうせだったら、脱ステするときに、脱保湿剤もやってしまえ!!」という作戦には理があると思います。

ただし、これは成人の場合。

アトピー性皮膚炎は、成人と乳幼児では成り立ちが異なる、とわたしは推測しています。

<小児、特に乳幼児のアトピーの場合>

赤ちゃんは、胎児のうちは皮脂をせっせと生産します。
出産時には頭に白い脂=胎脂(たいし)をくっつけて出てくる子は多いです。
ところが出生後すぐに皮脂の分泌は減り始め、1ヶ月後くらいに分泌量は最低ラインに落ちます。
その後、皮脂の分泌量は10年くらいかけてゆっくりゆっくり増えていきます。

赤ちゃんや子供の肌がスベスベ♪なのは、皮脂の分泌が少ないからです。(そのかわりコラーゲンやエラスチンなどの保水成分は多いので、"ぷりぷり"と"スベスベ"が両立するのです。)
大人で”赤ちゃんみたいな肌”をしている人はほぼいません。成人は一般的には皮脂の分泌が多く、つやのある人はいても、赤ちゃんのサラスベ肌にはならないのです。

赤ちゃんがうらやましい、と思うかもしれませんが、
皮脂が少ないからこそ赤ちゃんは成人に比べて、ずっとアトピー性皮膚炎になりやすいのです。

皮脂の少なさに加えて、赤ちゃんの1割はアレルギー体質です。
どんな子も赤ちゃんの時期は免疫シーソー(Th1 vs Th2)のバランスがアレルギー側(Th2側)に傾いています。
それが、成長の途中で様々な菌やウイルスにである、すなわち、感染症にかかっていくうちに免疫力が鍛えられ、Th1側へと免疫シーソーのバランスが傾いていきます。
そうすると皮膚の乾燥も、アトピーも治っていくのです。(そもそも皮脂の分泌量はアレルギー体質の人は少ない。)

(例外はRSウィルスで、このウイルスは免疫系をアレルギー側に強く傾けてしまいますから
かからないように注意が必要です。RSウィルスに感染すると喘息の発症率が上昇します。)

ご質問の内容に戻りますと、
乳幼児の場合、
アトピー(アレルギー体質)の程度が軽ければ、保湿を予めしっかりしておけばアトピー性皮膚炎にはならずにすむでしょう。
でも、アトピーが重い(=アレルギー体質が強めの)お子さんの場合、どんなに保湿をしっかりしても、天然の皮膚バリア成分と同等の保湿剤は販売されていないので、ほっぺや膝、肘の裏、耳たぶの下などの皮膚が切れて、アトピー(湿疹)が治らないままになってしまいます。

これを無理にでも治そう、とするとステロイドを塗るしかないのですが、ステロイドを剤をこんなに簡単に小児に塗って果たして大丈夫か?
(ステロイド外用薬はかえって成長後のアトピー性皮膚炎を助長するのではないか? 乳幼児の頃からステロイドを多用していると、皮膚のホメオスターシスが狂ってしまうのではないか?、成長とともに「皮膚炎を起こしやすい皮膚(irritable skin)」になっていくのではないか?、と弟の症状を長年見てきた今、そう考えています。下記の参照ブログもどうぞお読みください)

そんなこんなをいろいろ考えあわせて、
私自身は「子供にはステロイドを使わない」選択をしました。

ずっと以前の記事、「皮脂温存入浴法その1その2)」や「消毒法」に書いたように、入浴は石鹸を使わず、夏は毎日、脱塩素シャーワー or 脱塩素風呂。冬は2、3日に一度。
湿疹部分から細菌感染しないよう、
入浴前に、イソジンで消毒し、亜鉛華軟膏をドップリ塗布し、その上にサポーターをかぶせたりしていました(じくじく湿疹が出ていたら、1日に1回、入浴 or シャワーの前に消毒。亜鉛華軟膏はハゲ易いので、ハゲてるのに気づいたらその都度塗りなおし。すごい消費量でした。。。)

はっきり言って、ステロイドを塗った方が、お世話はナンボか簡単です。
うちのキューくんはアトピーが治らない=湿疹全開!(ほっぺた、膝の裏、耳の下側)だったので、膝の裏は、大人用のサポーター(腕に巻くやつ。)や靴下の先をちょん切ったものを足に履かせたり、冬は足先までつなぎのカバーオールを着せてひっかきをガードしたり、あの手この手でした。育休期間中、非常に忙しかったです。
育休が終わったら保育園ではひも付ミトンをはめてもらってました。ガーゼのミトンにバイアステープを抜いとめて、ミトンがはずれないようにテープを蝶結びにしてもらってました。協力してくださった保育園の先生方にはもう感謝の言葉しかありません。(保育園の先生たちは上の子がステロイドを塗っても治らず、やめて初めてゆっくり治っていったのをその目で見て知っていたので、非ステに協力してくださったのだと思います。実際、ステロイドを使い続けて治っていない子は何人もいましたから。。。)

「こんな手間、いつまでかけなきゃならんのかなぁ。。。。」とタメ息をついてた1歳3ヶ月頃
キューくんは保育園からリンゴ病をもらってきて、いきなり!アトピー性皮膚炎はなおってしまい、今に至ります。

現在(8歳)、冬場に耳切れはちょこっと出ますが、それだけです。他にアトピーの症状はありません。

そんなふうで、乳幼児アトピーの場合、
「ステロイドを使わなければ、”アトピーを発症させない”というのは非常に難しいときがある。
どうしても発症してしまう子はいる。(→アレルギー検査でアレルゲンだけでなく、総IgEの値を調べてください。この値が高い子はアトピーを発症しやすいので、目安になるし、理由がわかって今後の予想もできるので安心材料になります。)

しかし、成長の過程で幾度も感染症と戦うことにより、免疫が鍛えられ、免疫のバランスが変化していき、遅くともだいたい3歳頃にはアトピー性皮膚炎も治ります。
(ステロイドを使っても、時期がくれば治る子はいます。。。。でも、ステロイドの副作用が出るかもしれません。その子がステロイドを使っても大丈夫かどうかは、誰にも予測できません。)
ステロイドを使うと、塗ったそのときは症状が消えますが、また再発し、また塗り、、、、を繰り返し、使わなかった場合よりも長引く、というデータがあります(unpublished data by 藤澤重樹)

そんなふうに、乳幼児のアトピーは「いずれ治る」(ほとんどの子が3歳の誕生日までには治る)アトピーなので、保湿剤は使っても使わなくても、お母さんの好きにしたらいいと思います。
もちろん、湿疹のあるところに塗ると染みて痛がるので、塗ったら赤ちゃんの様子をよく観察してみてください。、
湿疹の患部は避けて、乾燥だけしている皮膚に塗ってください。
(うちはヒルドイドローション/ソフトともに、2人とも「かゆい!」と言って嫌がりました。なので、結果的にですが、ノー保湿でとおしてしまいました。)

私がもし保湿剤を使うとしたら、来年、冬になる前から、今、症状が出ている部分だけ重点的に保湿剤(ヒルドイドソフト)を塗って予防します。(いったん湿疹が治らないと、この手は使えないんですけどね。。。)

寝屋川の先生、というと木俣先生のところでしょうか。
大阪ですと阪南中央病院の佐藤先生も頼りになりますけど、
佐藤先生こそ脱保湿派です。(←おこさんの様子が、おかしいな?皮膚から感染しちゃったかな?と心配な時はぜひ佐藤先生のところに行かれるといいと思います。入院もできます。もちろん、木俣先生でも大丈夫です。ご経験はともに同じくらい豊富なはずです。)

正直なところ、脱ステの先生たちもその分子機序まで理解して治療なさっているわけではありません。
ただ、みなさん経験豊富で、「ステロイドを使わないで病気をなんとかする」腕を磨いてらっしゃるので、その辺のフツーの皮膚科医が代替できるようなレベルではない、ということです。かけこみ先をキープしておくのは大事だと思います。

こんな感じですが、お役に立ちましたでしょうか?

<参考>
「赤ちゃんにステロイド?」
(「アトピー覚書」より)
↑atopysanという成人アトピーの当事者の方のブログです。
この方のブログは私から見ても、非常に論理性が高く、科学的に正確です。なにより文章がスマート!(←爪のアカを煎じて飲みたいです。orz)
こちらの記事も。
「皮膚科が最大のリスク」
↑刺激的なタイトルですが、私の経験に照らし合せれば、非常に妥当です。
アトピーや湿疹で、普通の皮膚科医にかかるのはかえって危険です。
もし近くに非ステロイド治療の皮膚科医がいるようなら、そこに行ってみると良いと思います。






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おなつ

なかなかコメント出来ずすみません[あせあせ(飛び散る汗)]年末年始親子で体調不良でした(^^;
昔の記事色々読ませてもらっていたら、コメント当分しないとの事を後から発見しまして…色々書いちゃったなと思っていたら、こんな形で色々教えていただけるとは(>_<)[ぴかぴか(新しい)]
本当にありがとうございます(^O^)そうです、木俣先生です!2.3回自身の時に行っただけなんですが。
今は入浴法変えて、保湿もしっかりしたらだいぶマシになって来ました!
今は京都に引っ越したんですが、また様子を見て木俣先生か、佐藤先生の所受診してみたいと思います(^^)
添付してる記事もまた時間のある時ゆっくり読ませていただきます!
by おなつ (2018-01-06 11:03) 

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