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アトピーと菌と皮脂の関係。 [アトピー余談]

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アトピーにお困りの方なら一度くらいは「黄色ブドウ球菌」の名を聞い
たことがあると思います。
そう、悪名高い、アトピー性皮膚炎の起炎菌 No.1です。

普通の人にはほとんど検出されることのないこの菌が、何故かアトピー の人では頻繁に検出されるのです。(論文にもよりますが、40〜70%)黄色ブドウ球菌は様々な毒素を作る病原菌で、免疫力が低下していたりすると命に関わることさえあります。

正常皮膚の常在菌とは(黄色ではなく)表皮ブドウ球菌がメインです。
次に、P.acnes(増えすぎるとニキビの原因になりますが、常在菌です.)
その他、いくばくかの真菌類(マラセチアなど。アトピーではときに起炎菌になる。)です。

この表皮ブドウ球菌やP.acnesは皮脂をエサに増え、皮脂中の脂質を分解し て遊離酸(Free fatty acid)を作り、皮膚のpHを下げます(pH 5.0~5.5)。化粧品や洗顔剤の宣伝で言う「肌にやさしい弱酸性♪」です。このpHでは黄色ブドウ球菌は増えることができないのです。

ところが、皮膚に広い傷があったりして、汁(滲出液)がでていたりすると、この液のpHは6.8~7.0ですから、そこでは表皮ブドウ球菌よりも黄色ブドウ球菌がどっと増えます。こうやって 赤ちゃんの湿疹にも悪い菌がくっつき、炎症をひどくするのです。

なぜ黄色ブドウ球菌が炎症をひどくするかというと、この菌は悪い毒素
をいっぱい作るのです。
・コアグラーゼ(血球を凝集させます。)
・スーパー抗原(TSST-1が最強に凶悪。免疫細胞の一つであるT細胞を異常に活性化させ、免疫反応を過剰にひどくします。炎症もひどくなる。)
・プロテインA(このタンパクだけをマウスに塗っても、人間の アトピーに似た皮膚炎をおこすことができます。)
・エンテロトキシン(腸管毒。下痢をおこします。熱い強い。)
この他にもいっぱい作ってます♪

黄色ブドウ球菌が起こす他の病気としては
食中毒、伝染性膿痂疹(とびひ)、癤(せつ)、癰(よう)、蜂巣炎などがあり、表皮の化膿性疾患の原因になります。また、カテーテルや心臓弁など、医療行為に用いる異物に付着して、そこで骨髄炎、関節炎などの深部感染を起こすことがあります。これらの疾患で生じる膿瘍内(=膿の中)で細菌は増殖し続けますが、さらに細菌の増殖が進むと病巣周辺の組織を破壊しながら周囲に浸潤し、ときに血流に入って、菌血症や敗血症、急性心内膜炎、肺炎などを引き起こすことがある、なかなかに恐ろしい菌なのです。

怖いですね~。
でも免疫や皮膚が正常ならば、皮膚内や体内に入ってくることはほとんどありません。(食中毒だけは注意。)

みなさん「清潔好き」だと思いますが、何事もやりすぎは良く有りません。
お風呂に入れすぎて皮脂を落としてしまっては、善玉の表皮ブドウ球菌 は増えてくれないのです。
保湿をしたって、皮脂というエサがなければ増えてくれません。黄色ブドウ球菌から赤ちゃんを守ってくれないのです。

じゃあ、常に弱酸性の保湿剤でスキンケアをしていればいいのでは?と
思われるかもしれませんが、小さい赤ちゃんといえども全身満遍なく保
湿するのって、結構大変ですよね?
それに、保湿剤の成分はもとから酸性なのです。つまり常在菌が代謝して酸を作っていない。代謝してない、ということは「菌は食べてない」、なぜなら「菌のエサがない!」。保湿剤に常在菌の栄養源が入っていなければ、菌は増えてくれません。
保湿剤が効いている間は黄色ブドウ球菌は増えませんが、保湿剤というものは生活していると服などの摩擦によってとれてしまいます。(赤ちゃんはよく顔をごしごしこすりつけたりしますよね。)汗中のアンモニアによっても酸性が中和されてpHが上がってしまいます。

というわけで、私のおすすめは「入浴+保湿」よりも「風呂入れず」療法な訳です。
「保湿より皮脂」の意味が分かっていただけたでしょうか・・・・。(単なる無精、という話も。)

あ、でも、入浴した直後に保湿するのは良いと思います。ただでさえ少ない皮脂を補ってやる上でも。
さらにアトピーのお子さんなら積極的保湿が必要かもしれません。
というのは、少なくとも成人のアトピーの患者さんでは、皮脂のセラミド(角層の細胞間脂質の一つでもある。)が正常人に比べて少ないのです。(だから乾燥肌。)
また「アトピーの人は総皮脂量も少ない」という論文もあって、これが本当だとすると、アトピーの人の皮膚は黄色ブドウ球菌が生えやすい環境にあるということになります。(皮脂の少ない赤ちゃんはなおさら危ない?)
セラミドは保湿性能の高い成分で、これが不足するといくら水分を補っても皮膚の乾燥は著しくなります。
ということはセラミド入りの保湿剤がいいんじゃない?ということになりますね。実際こういう情報もありますし。
http://www.medscape.com/viewarticle/440011

ただし、日本のセラミド入り保湿剤でアトピーに効果がある、というデータを取って証明した商品はまだありません。
地道に買って試してみるしかないでしょう。(セラミド含有量や添加物の問題もあるため、症状が悪化した商品は使わないことです。)
それと、くれぐれもジュクジュク湿疹には塗らないようにしてくださいね☆

※セラミドについては後日、興味深い研究の情報をUPしますね。

それにしてもヒトの皮脂成分と同じ保湿剤って売ってないですかね〜?
それなら菌のエサにもなってくれると思うんですが。
ご存知の方、是非教えてくださいね♪
(市販品にはうといLuxelなのでした。m(_ _)m)


<参考文献>
「人体常在菌のはなし」青木 皐 (集英社新書 - 2004/9)
「人体常在菌」牛嶋 彊 (医薬ジャーナル社 - 2001/12)

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