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"我が家の経口免疫療法" (準備編3) アトピーだけど、離乳食どうしたら? [食物アレルギー対策]

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<お詫び>記事の下の方の、卵の量を変更しました(訂正前のものをアップしてしまっていました。)どうぞご注意ください。

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久々にアレルギー関連の記事の更新です。

2016年末、国立成育医療研究センターから
食物アレルギーの早期予防に関する論文が発表されました。
https://www.ncchd.go.jp/press/2016/egg.html
掲載雑誌はLancet。医学系の最高位です。さすが!
論文リンク
http://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(16)31418-0/abstract
アトピー性皮膚炎のある乳児を集めて、生後6ヶ月から
加熱全卵粉末50mg(生全卵200mgに相当)を与えるランダム化介入試験(つまり半数はプラセボ)を実施して、その結論として「1歳の時点で鶏卵アレルギーが8割減った!」という
なかなかにインパクトのある結果が出ています。(HPには、わが国では医師の指示で3歳児の5.8%が鶏卵摂取を制限されています、と記載されてます。)

これは「早期経口免疫療法」とでも言うべき方法で(※経口免疫療法は現在のところ5、6歳になってから推奨)、
素晴らしい研究と思います。
もうしばらくすれば「血液検査でIgE陽性なら除去を指示」という対処法(治療法)は学会レベルで変更され、「離乳開始とともに(注意しながら)積極的に食べさせてましょう」となるのでは、と思います。
(今すぐに家庭で実施するのは避けて、と彼らはHPでは呼びかけています。これは医師の立場からすれば、そう言わないといけない。)

これは「除去食療法(←正確には「療法」とは言えないのですが)」が長らくスタンダードであった過去30年からすると、一大転換であり、
エポックメーキング的な研究(英国で先に発表されたピーナッツの研究がありますが)です。

ただし、この研究をもってして「ほら、やっぱり早期に食べさせた方がいいのよ!」とは一概にはならないので、注意が必要です。
この研究は「生後4、5ヶ月の時点でアトピーのある子」を集めて実施しているのですが、その際、除外基準があります。
「卵と卵製品を食べたことがある子」は除外。←は、いいとして、
卵に対する即時型アレルギー反応(アナフィラキシー反応)を起こしたことのある子
特定の食物に対して非即時型アレルギー反応を起こしたことのある子
は除外されています。

つまり、
「すでに卵アレルギーを発症している子」
「食物アレルギーを起こしている/おこしやすい」と推定される子」
は除外されているのです。んんーーーー??
じゃぁ、もうアナフィラキシー起したことあって、一番困ってる子(と親)には役に立たないじゃん!
うちのキュ〜君(当時)も、この臨床試験には入れてもらえないんだぁ。。。

と思ってしまいますが、
まぁ、これは仕方ない、というか、
「この研究はこれから始める一連の経口免疫療法の最初の臨床研究なので、最初はリスクの高い子は除外した」ということです。研究が続いていけば、そのうち対象にしてくれるでしょう。

(アナフィラキシーを起こした子がこの試験に参加すると、かなりの高確率で命にかかわるアナフィラキシーショックをおこすと予想されます。体の小さい、体力のない乳児をそこまでの危険にさらすのは倫理的にゆるされないからです。もっと「経口免疫療法は安全である」という証拠が増えてからでないと、トライアルできないのでしょう。)

ただ、この研究の結果も「すでに卵アレルギーを発症している子」「食物アレルギーである可能性が高い子」にあてはめることはできない、ということです。
そこは注意して論文を読まなくてはなりません。
でも、生後6ヶ月ではまだ離乳食開始してない子もいるだろうし、アトピーの子を集めた、ということはアレルギー体質の子が多い、ということ。食物アレルギー予備軍は含まれている集団だと考えられます。

実際、どういう子がエントリーしているか見てみると、
卵白特異的IgEやオボムコイド特異的IgEが出ている子も出ていない子も入っています。
血液検査では「陽性者も陰性者もいる」状態で、ミックスです。
ランダム化試験(RCT)なので、平均値は異なりますが、
うまい具合に、介入群よりプラセボ群より方が試験前のIgEの数値が高くなっていて、
「介入によって悪化したかどうか」は判定しやくなっていると思います。

それと、この論文の結果を読む上での注意点は、
卵投与群も、プラセボ群も、投与に入る前に
「ステロイド外用剤や保湿剤をしっかり使って、アトピーの湿疹消えるまで」がっつり治療している」点です。
(" Specifically, for infants with moderate-to-severe eczema, we applied topical corticosteroids (0·1% hydrocortisone butyrate ointment for the face and 0·12% betamethasone valerate ointment for everywhere else) daily until the eczema disappeared. ")

なので、
「じゃぁ、ステロイドを使っていない子は湿疹が出るけど、どうなの?
そういう子も、早めに卵を与えた方がいいの?」
という疑問に答える論文ではないんですよね。
(Luxelも、「湿疹は、治せるものなら治した方がいい」とは思うのですが、
「たとえステロイドを使ってでも」かどうかが違うわけです。

(私の方針は「ステロイド以外の方法で湿疹が治るのなら、何でも(保湿剤、入浴法、消毒、etc.)トライするべきだ」です。これは私自身の実体験から得た教訓なので、アレルギー学の大家の先生達と対立することになっても曲げません。だってこの先生たち、自分の子供がアトピーで、ステロイド有り/無しで育てて、食事の面倒まで見た経験って持ってない人たちですから。)

まぁ、この研究の最終的な目的の一つは
「皮膚をステロイドでしっかり治療することによって、食物アレルギーの発症を予防した方が良い」と言いたいのでしょう。(ただし、この論文でこの結論を言う試験の設計にはなっていませんから、「卵は早く(生後4〜6ヶ月)与えても大丈夫。ただし、湿疹はがっつり治療してるんだよ♪」くらいの結論です。
それでもこの論文に価値がない訳でありません。(いえ、ちゃんと価値あります。)
なにしろこの分野、なかなか進展がないもので、
「アレルゲン候補タンパク質を食べさせる時期は、4〜6ヶ月の間、早くても大丈夫(ただしステロイド使ってでも治療してたらね)」は言えるわけですから。


で、「8割は卵アレルギーにならなかった」という結論ですが、
気になるのは「プラセボ群の結果は?」「卵を与えたグループの残りの2割はどうだったんだろう? アレルギーはひどくなったのかしら?」
という疑問と、
この研究は「皮膚症状をステロイドを用いて完璧に抑えた」そうで、
「えーーー、この子たちはこの試験が終わったら、ステロイドから無事離脱できたのかしら?それともまだ使い続けているのかしら?」という疑問。
そもそも「ステロイドを使わなかった場合の皮膚症状の変遷は見ていない訳で、もし使わなかったらどうだったんだろう?」と気になります。

日本の小児科は英米豪にくらべると、子どものアトピーに対しかなり積極的にステロイドを使う方を打ち出していますので、長い目で見た場合に、大丈夫なんだろうか?と。
(研究グループ長の大矢先生はステロイドは保湿剤と組み合わせ使うはずなので、たぶんステ単独よりはステロイド使用量としては抑えられているのでは、と期待して推測しますが、使うことには変わりがないので、長期使用になると心配です。)

この研究を、皮膚症状を徹底的に抑えてて実施したのは、この研究が「食物アレルギーは皮膚から(食物アレルゲンに)感作しておこる」という仮説に立っているからです。(HPの「補足説明2」参照)

でも、私が調べた限りでは、この説「経皮感作説」はそんなに強力な証拠に裏打ちされた仮説ではありません。
英国でのピーナッツアレルギーの研究(英国ではピーナツオイルを入浴後にベビーオイルとして皮膚に塗る習慣がある)や
茶のしずく石鹸誘発小麦アレルギー事件を根拠としているのではないか、と思います

私たち母親の生活実感からすると、確かに赤ちゃんは食事を手で掴んだりはしますが、
アトピーの湿疹が出ている頰や手足の関節の屈側になすりつけたりはしません。
口の周りに「よだれかぶれ」が出ている子では、その「かぶれ」の部分から接触することはありえます。「よだれかぶれ」から感作することが絶対にない、とはいえません。
よだれかぶれの部分から弱い感作(すると血液中に食物特異的IgEが検出される)が生じる可能性が無いではないのですが、それがよだれかぶれからの感作なのか、口腔内粘膜経由での感作なのか、腸管経由なのか、区別する術はありませんし、とりたてて経皮だけを警戒する根拠はないように思います。
(日本は、幸いピーナツ油やごま油で赤ちゃんのスキンケアをする週間はありません。市販のベビーオイルは食用油とは関係のないミネラルオイルです。)

赤ちゃんのよだれかぶれは昔からありふれていて、食物アレルギーを増やす原因になっているとはちょっと考えにくい。(←我が家のキュ〜君の経験からも。)
それに、アトピーが出たままで離乳食を開始したうちのキュ〜君がアナフィラキシーを起こしたのは
離乳前の血液検査が RAST(特異的IgE)陽性だった「卵、小麦、牛乳」だけでした。

キュ〜君の場合、1歳から2歳くらいの間に一時的に「じゃがいも、とうもろこし、鶏肉、さば、あじ 」などが一時的に低いながらも陽性を示しました。(ちょうどよだれかぶれが出ていた頃ではあります)これは腸を経由しての感作だけではなく、かぶれ部位での経皮感作の結果だったのかもしれませんが、幸いこれらは食べても何の不調も起こらなかったので、食べさせ続けているうちに、2、3歳の頃には陰性化していきました。(キュ〜くんのIgEデータ参照⇩)

なので、私は「ピーナッツオイルを全身にするこむように塗りたくる」とか「タンパク質入りの石鹸や入浴剤で全身を毎日洗う」とかでない限り、経皮感作は起こらないのではないか、と考えています。(もちろん生物は個体差のある集団ですから、絶対にない、とは言えませんが。)
少なくとも、「よだれかぶれ部位でアレルゲンに感作して食物アレルギーになるから、よだれかぶれもステロイドを使って直すべきだ」というのは誤りだろうと思います。

いずれにせよ、「よだれかぶれから感作して、アナフィラキシーを起こすほどの症状が出る。」とはちょっと考えにくいと思います。
上記の成育医療センターの研究紹介のHPに英米のピーナッツアレルギーの背景が紹介されていますが、「空気中の抗原」が原因ならば経皮よりは気道粘膜や肺粘膜の方がよほど問題になりそうです。(でも、喘息には言及してません)
私の推定なのですが、「アレルギーを克服するには、腸管粘膜からアレルゲンを吸収させることが大事」ということです。そもそも制御性T細胞を効率よく誘導できる体表面は腸管だけです。
「食べる=腸管免疫にアレルゲンが接触する」ことが、アレルギーの発症を抑制するのだと思います。(このアレルギーを抑える仕組みを「経口免疫寛容」といい、大昔からある免疫学研究テーマの一つです。)

もっとも「ヨダレかぶれの部分だけにある食物を毎日接触させ、接触させるだけで食べさせないでおく」なんていう、日常生活にありえなさそうなシチュエーションを模した研究はこの先も実施される見込みはないので、真実が明らかになることもないと思いますが。。。

よだれかぶれの湿疹から体内に入るアレルゲン量よりはるかに大量のアレルゲンが腸管に入っていき、それらは制御性T細胞を始めとする、そのアレルゲン特異的な免疫寛容を腸管において誘導するからです。
よだれかぶれ部位で微量のアレルゲンに感作してアレルギーが生じる反応が起こったとしても、腸管で誘導される免疫の方がはるかに強力です。

ただ、一つ、注意した方がいいだろうな、、、と思うのは
「ある食物を毎回、微量ずつ」よりは、「ある食物を、(アナフィラキシーが起きるのでない限り)、腸管にしっかり届くくらいの(大)量」食べさせた方がいいだろう、と思います。
口唇や口腔内にだけ届く量よりは、(胃で分解されても、なお)腸管にしっかり届くくらいがいい。
それは、制御性T細胞は、腸管粘膜で生み出されるからです。


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ではどうしたら?
ですが、離乳食はあまり考えずに5、6ヶ月から初めて良いと思います。
ただ、みなさんそうだと思うのですが、
たんぱく質含量の低い野菜から与え始めるお母さんが多いと思うのですが、
これはいいと思います。

そして、これはちょっとしたアイデアなのですが(3人目がもし生まれてたら、私がやろうと思ってたアイデア)
スプーン1杯くらいの「ガラクトオリゴ糖」をミルクに加えるか、りんごのすりおろしやつぶしバナナにまぜて与えます。
なぜガラクトオリゴ糖と限定するか、というと、母乳に含まれるオリゴ糖はこれなのです。
便秘解消等に使われることもあります。
オリゴ糖の種類が違えば、育つ腸内細菌の種類も異なることがこれまでの長い研究でわかっています。(日本は腸内細菌については長い研究の歴史があります。発酵食品のシェアも大きいですから。)
腸内細菌は、腸管免疫の方向をある程度変えることが知られています。
菌は、腸管の正常な成長に必要なのです。
(無菌マウスの腸管免疫組織は小さく未発達だ、という研究があります。日本の研究です。)

前にもこのブログで書きましたが、
「生後半年くらいで一度、血液検査をしてもらい
トータルのIgEの数値(RAST値と表記されることも)と
主要なアレルギー抗原(卵、牛乳、小麦、等)に対するIgE抗体の有無くらいは調べておいた方が良い」
と書きましたが、ぜひやってくれるところを探してみてください。
「身内にひどい食物アレルギーがいて、遺伝が気になる」とか「兄弟がひどいアトピーで」(←うちがお願したときの理由。先生も、「じゃぁ、特別に」とやってくれました。)言うとやってくれるかもしれませんので、少々嫌な顔されたくらいではひるまずに、ぜひお願してみてください。

あらかじめIgEが出てるかどうかわかっていると、アナフィラキシーを警戒することができます。
というのは、アナフィラキシーに対処できるエピペンの処方は体重15kgになってからなので(←これ、ほんと片手落ちだと思うのですが)、離乳食の時期にはもらえないのです。

たとえば、卵に対するIgEが「有」と出たら、食べさせないのではなく、
「最初のトライは、病院が開いている時間にする」
あるいは
「病院に連れて行って、そこで食べさせる」(←意識の高い先生だと、連れてきて、ここであげていーわよーと言ってくれたりします。)
ようにすれば安全です。特に後者。
最初は、固いり卵、固ゆで卵など、しっかり火を通したものを0.2g(←論文の値)から、が妥当と思います。(でも、この量でもうちのキュ〜君はアウトだったんですよ。だから、病院内で、を強くお勧めします。つまり「アレルギーに詳しい小児科の先生」を探すに越したことはないです。)

食後1時間くらいは病院にいた方がいいでしょう。
アナフィラキシー症状がでないか、よく観察します。
たとえば、「口腔内のかゆみ=あかちゃんが口に手をつっこんだり
ベロをしきりに出して、食べた物を出そうとしていないか?」
「かゆそうに目をこすっていないか?」
「(腹痛で)泣いて、急に下痢便が出たりしないか?」
「急に咳が出たり、ゼーゼーひゅーひゅーと喘鳴が聞こえないか?」
「急に、蕁麻疹がでてないか?」
などです。

アトピーがすでに出ている赤ちゃんのお母さんは、よく「食後に皮疹が悪化した」といって「○○アレルギーかも」と悩む人が多いですが、1日単位の皮膚の症状の変化を一喜一憂する必要はありません。
(よほどはっきりと、食後1時間以内くらいにはっきりとした蕁麻疹が出たりしたら、それは別ですが、そういう場合は上記の他の症状も伴っていると思います。)

この「ファースト・トライ」で「大丈夫な量(何の症状も出ない量)」がわかったら、あとは簡単です。
おうちで毎日でなくてもいいですが、1日おき、とかでちょっとずつ増やしていけばいいのです。(おかゆと一緒に口にいれてやる)
例えば0.2gがオッケーだったら、論文だと3ヶ月後(生後9ヶ月)からは量が1.1g相当にぐっと上げてあります。
が、私は自宅で実施する場合には漸増していった方が安心だと思います。

増やすペースは1週間(投与は3回以上)は同じ量を続けて、次の週は少し増やす(0.2gから0.3gへ。)
で、また同じ量で1週間、3回以上くらい与えてみます。3週目には0.4g、4週目には0.5g、、、くらいの感じで。心配なら2週間同じ量を続けてもいいと思います。
卵抗原へのIgEが血中にあったとしても、症状が出ない限りはトントンとこんな感覚で増やしていっていいと思います。
ただし、1回でも症状が出たら、ちょっと立ち止まってください。

そのとき症状は、
・「口腔内のかゆみ」だけなのか、
・腹痛がありそうか、食べた後に出る便が泣いてそうか、
・じんましんが出ていないか(ベビー服を脱がせて点検)
・喘鳴(ぜんめい)はあるか?(呼吸音が「ぜーぜー」「ひゅーひゅー」言っていないか、「ゼロゼロ」音=分泌物が増加している気配がないか)

冷静に、でも、さっと一通り観察して、
もし抗ヒスタミン剤が処方されてたら飲ませてください。(医師の指導の元でやっていれば、そのような処方と指示が出ると思います。)

で。いよいよ、次回、このブログで一番肝心な記事(かも)。

こういった、「アナフィラキシーを起こしてしまったお子さん」について。
上に紹介した研究から除外されるような子はどうしたら? です。
まさしく、私がうちのキュ〜君にやった方法のご紹介、ついに次回!

近日中にアップの予定です。




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