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"我が家の経口免疫療法" (準備編3) アトピーだけど、離乳食どうしたら? [食物アレルギー対策]

<お詫び>記事の下の方の、卵の量を変更しました(訂正前のものをアップしてしまっていました。)どうぞご注意ください。

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久々にアレルギー関連の記事の更新です。

2016年末、国立成育医療研究センターから
食物アレルギーの早期予防に関する論文が発表されました。
https://www.ncchd.go.jp/press/2016/egg.html
掲載雑誌はLancet。医学系の最高位です。さすが!
論文リンク
http://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(16)31418-0/abstract
アトピー性皮膚炎のある乳児を集めて、生後6ヶ月から
加熱全卵粉末50mg(生全卵200mgに相当)を与えるランダム化介入試験(つまり半数はプラセボ)を実施して、その結論として「1歳の時点で鶏卵アレルギーが8割減った!」という
なかなかにインパクトのある結果が出ています。(HPには、わが国では医師の指示で3歳児の5.8%が鶏卵摂取を制限されています、と記載されてます。)

これは「早期経口免疫療法」とでも言うべき方法で(※経口免疫療法は現在のところ5、6歳になってから推奨)、
素晴らしい研究と思います。
もうしばらくすれば「血液検査でIgE陽性なら除去を指示」という対処法(治療法)は学会レベルで変更され、「離乳開始とともに(注意しながら)積極的に食べさせてましょう」となるのでは、と思います。
(今すぐに家庭で実施するのは避けて、と彼らはHPでは呼びかけています。これは医師の立場からすれば、そう言わないといけない。)

これは「除去食療法(←正確には「療法」とは言えないのですが)」が長らくスタンダードであった過去30年からすると、一大転換であり、
エポックメーキング的な研究(英国で先に発表されたピーナッツの研究がありますが)です。

ただし、この研究をもってして「ほら、やっぱり早期に食べさせた方がいいのよ!」とは一概にはならないので、注意が必要です。
この研究は「生後4、5ヶ月の時点でアトピーのある子」を集めて実施しているのですが、その際、除外基準があります。
「卵と卵製品を食べたことがある子」は除外。←は、いいとして、
卵に対する即時型アレルギー反応(アナフィラキシー反応)を起こしたことのある子
特定の食物に対して非即時型アレルギー反応を起こしたことのある子
は除外されています。

つまり、
「すでに卵アレルギーを発症している子」
「食物アレルギーを起こしている/おこしやすい」と推定される子」
は除外されているのです。んんーーーー??
じゃぁ、もうアナフィラキシー起したことあって、一番困ってる子(と親)には役に立たないじゃん!
うちのキュ〜君(当時)も、この臨床試験には入れてもらえないんだぁ。。。

と思ってしまいますが、
まぁ、これは仕方ない、というか、
「この研究はこれから始める一連の経口免疫療法の最初の臨床研究なので、最初はリスクの高い子は除外した」ということです。研究が続いていけば、そのうち対象にしてくれるでしょう。

(アナフィラキシーを起こした子がこの試験に参加すると、かなりの高確率で命にかかわるアナフィラキシーショックをおこすと予想されます。体の小さい、体力のない乳児をそこまでの危険にさらすのは倫理的にゆるされないからです。もっと「経口免疫療法は安全である」という証拠が増えてからでないと、トライアルできないのでしょう。)

ただ、この研究の結果も「すでに卵アレルギーを発症している子」「食物アレルギーである可能性が高い子」にあてはめることはできない、ということです。
そこは注意して論文を読まなくてはなりません。
でも、生後6ヶ月ではまだ離乳食開始してない子もいるだろうし、アトピーの子を集めた、ということはアレルギー体質の子が多い、ということ。食物アレルギー予備軍は含まれている集団だと考えられます。

実際、どういう子がエントリーしているか見てみると、
卵白特異的IgEやオボムコイド特異的IgEが出ている子も出ていない子も入っています。
血液検査では「陽性者も陰性者もいる」状態で、ミックスです。
ランダム化試験(RCT)なので、平均値は異なりますが、
うまい具合に、介入群よりプラセボ群より方が試験前のIgEの数値が高くなっていて、
「介入によって悪化したかどうか」は判定しやくなっていると思います。

それと、この論文の結果を読む上での注意点は、
卵投与群も、プラセボ群も、投与に入る前に
「ステロイド外用剤や保湿剤をしっかり使って、アトピーの湿疹消えるまで」がっつり治療している」点です。
(" Specifically, for infants with moderate-to-severe eczema, we applied topical corticosteroids (0·1% hydrocortisone butyrate ointment for the face and 0·12% betamethasone valerate ointment for everywhere else) daily until the eczema disappeared. ")

なので、
「じゃぁ、ステロイドを使っていない子は湿疹が出るけど、どうなの?
そういう子も、早めに卵を与えた方がいいの?」
という疑問に答える論文ではないんですよね。
(Luxelも、「湿疹は、治せるものなら治した方がいい」とは思うのですが、
「たとえステロイドを使ってでも」かどうかが違うわけです。

(私の方針は「ステロイド以外の方法で湿疹が治るのなら、何でも(保湿剤、入浴法、消毒、etc.)トライするべきだ」です。これは私自身の実体験から得た教訓なので、アレルギー学の大家の先生達と対立することになっても曲げません。だってこの先生たち、自分の子供がアトピーで、ステロイド有り/無しで育てて、食事の面倒まで見た経験って持ってない人たちですから。)

まぁ、この研究の最終的な目的の一つは
「皮膚をステロイドでしっかり治療することによって、食物アレルギーの発症を予防した方が良い」と言いたいのでしょう。(ただし、この論文でこの結論を言う試験の設計にはなっていませんから、「卵は早く(生後4〜6ヶ月)与えても大丈夫。ただし、湿疹はがっつり治療してるんだよ♪」くらいの結論です。
それでもこの論文に価値がない訳でありません。(いえ、ちゃんと価値あります。)
なにしろこの分野、なかなか進展がないもので、
「アレルゲン候補タンパク質を食べさせる時期は、4〜6ヶ月の間、早くても大丈夫(ただしステロイド使ってでも治療してたらね)」は言えるわけですから。


で、「8割は卵アレルギーにならなかった」という結論ですが、
気になるのは「プラセボ群の結果は?」「卵を与えたグループの残りの2割はどうだったんだろう? アレルギーはひどくなったのかしら?」
という疑問と、
この研究は「皮膚症状をステロイドを用いて完璧に抑えた」そうで、
「えーーー、この子たちはこの試験が終わったら、ステロイドから無事離脱できたのかしら?それともまだ使い続けているのかしら?」という疑問。
そもそも「ステロイドを使わなかった場合の皮膚症状の変遷は見ていない訳で、もし使わなかったらどうだったんだろう?」と気になります。

日本の小児科は英米豪にくらべると、子どものアトピーに対しかなり積極的にステロイドを使う方を打ち出していますので、長い目で見た場合に、大丈夫なんだろうか?と。
(研究グループ長の大矢先生はステロイドは保湿剤と組み合わせ使うはずなので、たぶんステ単独よりはステロイド使用量としては抑えられているのでは、と期待して推測しますが、使うことには変わりがないので、長期使用になると心配です。)

この研究を、皮膚症状を徹底的に抑えてて実施したのは、この研究が「食物アレルギーは皮膚から(食物アレルゲンに)感作しておこる」という仮説に立っているからです。(HPの「補足説明2」参照)

でも、私が調べた限りでは、この説「経皮感作説」はそんなに強力な証拠に裏打ちされた仮説ではありません。
英国でのピーナッツアレルギーの研究(英国ではピーナツオイルを入浴後にベビーオイルとして皮膚に塗る習慣がある)や
茶のしずく石鹸誘発小麦アレルギー事件を根拠としているのではないか、と思います

私たち母親の生活実感からすると、確かに赤ちゃんは食事を手で掴んだりはしますが、
アトピーの湿疹が出ている頰や手足の関節の屈側になすりつけたりはしません。
口の周りに「よだれかぶれ」が出ている子では、その「かぶれ」の部分から接触することはありえます。「よだれかぶれ」から感作することが絶対にない、とはいえません。
よだれかぶれの部分から弱い感作(すると血液中に食物特異的IgEが検出される)が生じる可能性が無いではないのですが、それがよだれかぶれからの感作なのか、口腔内粘膜経由での感作なのか、腸管経由なのか、区別する術はありませんし、とりたてて経皮だけを警戒する根拠はないように思います。
(日本は、幸いピーナツ油やごま油で赤ちゃんのスキンケアをする週間はありません。市販のベビーオイルは食用油とは関係のないミネラルオイルです。)

赤ちゃんのよだれかぶれは昔からありふれていて、食物アレルギーを増やす原因になっているとはちょっと考えにくい。(←我が家のキュ〜君の経験からも。)
それに、アトピーが出たままで離乳食を開始したうちのキュ〜君がアナフィラキシーを起こしたのは
離乳前の血液検査が RAST(特異的IgE)陽性だった「卵、小麦、牛乳」だけでした。

キュ〜君の場合、1歳から2歳くらいの間に一時的に「じゃがいも、とうもろこし、鶏肉、さば、あじ 」などが一時的に低いながらも陽性を示しました。(ちょうどよだれかぶれが出ていた頃ではあります)これは腸を経由しての感作だけではなく、かぶれ部位での経皮感作の結果だったのかもしれませんが、幸いこれらは食べても何の不調も起こらなかったので、食べさせ続けているうちに、2、3歳の頃には陰性化していきました。(キュ〜くんのIgEデータ参照⇩)

なので、私は「ピーナッツオイルを全身にするこむように塗りたくる」とか「タンパク質入りの石鹸や入浴剤で全身を毎日洗う」とかでない限り、経皮感作は起こらないのではないか、と考えています。(もちろん生物は個体差のある集団ですから、絶対にない、とは言えませんが。)
少なくとも、「よだれかぶれ部位でアレルゲンに感作して食物アレルギーになるから、よだれかぶれもステロイドを使って直すべきだ」というのは誤りだろうと思います。

いずれにせよ、「よだれかぶれから感作して、アナフィラキシーを起こすほどの症状が出る。」とはちょっと考えにくいと思います。
上記の成育医療センターの研究紹介のHPに英米のピーナッツアレルギーの背景が紹介されていますが、「空気中の抗原」が原因ならば経皮よりは気道粘膜や肺粘膜の方がよほど問題になりそうです。(でも、喘息には言及してません)
私の推定なのですが、「アレルギーを克服するには、腸管粘膜からアレルゲンを吸収させることが大事」ということです。そもそも制御性T細胞を効率よく誘導できる体表面は腸管だけです。
「食べる=腸管免疫にアレルゲンが接触する」ことが、アレルギーの発症を抑制するのだと思います。(このアレルギーを抑える仕組みを「経口免疫寛容」といい、大昔からある免疫学研究テーマの一つです。)

もっとも「ヨダレかぶれの部分だけにある食物を毎日接触させ、接触させるだけで食べさせないでおく」なんていう、日常生活にありえなさそうなシチュエーションを模した研究はこの先も実施される見込みはないので、真実が明らかになることもないと思いますが。。。

よだれかぶれの湿疹から体内に入るアレルゲン量よりはるかに大量のアレルゲンが腸管に入っていき、それらは制御性T細胞を始めとする、そのアレルゲン特異的な免疫寛容を腸管において誘導するからです。
よだれかぶれ部位で微量のアレルゲンに感作してアレルギーが生じる反応が起こったとしても、腸管で誘導される免疫の方がはるかに強力です。

ただ、一つ、注意した方がいいだろうな、、、と思うのは
「ある食物を毎回、微量ずつ」よりは、「ある食物を、(アナフィラキシーが起きるのでない限り)、腸管にしっかり届くくらいの(大)量」食べさせた方がいいだろう、と思います。
口唇や口腔内にだけ届く量よりは、(胃で分解されても、なお)腸管にしっかり届くくらいがいい。
それは、制御性T細胞は、腸管粘膜で生み出されるからです。


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ではどうしたら?
ですが、離乳食はあまり考えずに5、6ヶ月から初めて良いと思います。
ただ、みなさんそうだと思うのですが、
たんぱく質含量の低い野菜から与え始めるお母さんが多いと思うのですが、
これはいいと思います。

そして、これはちょっとしたアイデアなのですが(3人目がもし生まれてたら、私がやろうと思ってたアイデア)
スプーン1杯くらいの「ガラクトオリゴ糖」をミルクに加えるか、りんごのすりおろしやつぶしバナナにまぜて与えます。
なぜガラクトオリゴ糖と限定するか、というと、母乳に含まれるオリゴ糖はこれなのです。
便秘解消等に使われることもあります。
オリゴ糖の種類が違えば、育つ腸内細菌の種類も異なることがこれまでの長い研究でわかっています。(日本は腸内細菌については長い研究の歴史があります。発酵食品のシェアも大きいですから。)
腸内細菌は、腸管免疫の方向をある程度変えることが知られています。
菌は、腸管の正常な成長に必要なのです。
(無菌マウスの腸管免疫組織は小さく未発達だ、という研究があります。日本の研究です。)

前にもこのブログで書きましたが、
「生後半年くらいで一度、血液検査をしてもらい
トータルのIgEの数値(RAST値と表記されることも)と
主要なアレルギー抗原(卵、牛乳、小麦、等)に対するIgE抗体の有無くらいは調べておいた方が良い」
と書きましたが、ぜひやってくれるところを探してみてください。
「身内にひどい食物アレルギーがいて、遺伝が気になる」とか「兄弟がひどいアトピーで」(←うちがお願したときの理由。先生も、「じゃぁ、特別に」とやってくれました。)言うとやってくれるかもしれませんので、少々嫌な顔されたくらいではひるまずに、ぜひお願してみてください。

あらかじめIgEが出てるかどうかわかっていると、アナフィラキシーを警戒することができます。
というのは、アナフィラキシーに対処できるエピペンの処方は体重15kgになってからなので(←これ、ほんと片手落ちだと思うのですが)、離乳食の時期にはもらえないのです。

たとえば、卵に対するIgEが「有」と出たら、食べさせないのではなく、
「最初のトライは、病院が開いている時間にする」
あるいは
「病院に連れて行って、そこで食べさせる」(←意識の高い先生だと、連れてきて、ここであげていーわよーと言ってくれたりします。)
ようにすれば安全です。特に後者。
最初は、固いり卵、固ゆで卵など、しっかり火を通したものを0.2g(←論文の値)から、が妥当と思います。(でも、この量でもうちのキュ〜君はアウトだったんですよ。だから、病院内で、を強くお勧めします。つまり「アレルギーに詳しい小児科の先生」を探すに越したことはないです。)

食後1時間くらいは病院にいた方がいいでしょう。
アナフィラキシー症状がでないか、よく観察します。
たとえば、「口腔内のかゆみ=あかちゃんが口に手をつっこんだり
ベロをしきりに出して、食べた物を出そうとしていないか?」
「かゆそうに目をこすっていないか?」
「(腹痛で)泣いて、急に下痢便が出たりしないか?」
「急に咳が出たり、ゼーゼーひゅーひゅーと喘鳴が聞こえないか?」
「急に、蕁麻疹がでてないか?」
などです。

アトピーがすでに出ている赤ちゃんのお母さんは、よく「食後に皮疹が悪化した」といって「○○アレルギーかも」と悩む人が多いですが、1日単位の皮膚の症状の変化を一喜一憂する必要はありません。
(よほどはっきりと、食後1時間以内くらいにはっきりとした蕁麻疹が出たりしたら、それは別ですが、そういう場合は上記の他の症状も伴っていると思います。)

この「ファースト・トライ」で「大丈夫な量(何の症状も出ない量)」がわかったら、あとは簡単です。
おうちで毎日でなくてもいいですが、1日おき、とかでちょっとずつ増やしていけばいいのです。(おかゆと一緒に口にいれてやる)
例えば0.2gがオッケーだったら、論文だと3ヶ月後(生後9ヶ月)からは量が1.1g相当にぐっと上げてあります。
が、私は自宅で実施する場合には漸増していった方が安心だと思います。

増やすペースは1週間(投与は3回以上)は同じ量を続けて、次の週は少し増やす(0.2gから0.3gへ。)
で、また同じ量で1週間、3回以上くらい与えてみます。3週目には0.4g、4週目には0.5g、、、くらいの感じで。心配なら2週間同じ量を続けてもいいと思います。
卵抗原へのIgEが血中にあったとしても、症状が出ない限りはトントンとこんな感覚で増やしていっていいと思います。
ただし、1回でも症状が出たら、ちょっと立ち止まってください。

そのとき症状は、
・「口腔内のかゆみ」だけなのか、
・腹痛がありそうか、食べた後に出る便が泣いてそうか、
・じんましんが出ていないか(ベビー服を脱がせて点検)
・喘鳴(ぜんめい)はあるか?(呼吸音が「ぜーぜー」「ひゅーひゅー」言っていないか、「ゼロゼロ」音=分泌物が増加している気配がないか)

冷静に、でも、さっと一通り観察して、
もし抗ヒスタミン剤が処方されてたら飲ませてください。(医師の指導の元でやっていれば、そのような処方と指示が出ると思います。)

で。いよいよ、次回、このブログで一番肝心な記事(かも)。

こういった、「アナフィラキシーを起こしてしまったお子さん」について。
上に紹介した研究から除外されるような子はどうしたら? です。
まさしく、私がうちのキュ〜君にやった方法のご紹介、ついに次回!

近日中にアップの予定です。




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"我が家の"経口免疫療法(準備編2)〜治療の流れ&ステロイドをどうするか?〜 [食物アレルギー対策]

すいません、まだ「じゅんび編2」です。先に「実践編 その1(牛乳と小麦)」を公開してしまいましたので、記事が前後してしまいました。この記事が「Luxel家の経口免疫療法」の骨子です。ぜひお読み願います。

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経口免疫療法に欠かせないエピペンの効果と使い方の説明を、と前回書きましたが
その前に、書いておかなくては、と思ったことがあります。
(エピペンの使い方は次回にまわします。) m(_ _)m
"標準的治療法"(*)と"Luxel家版"の違いです。

*「標準療法」ではなく「標準的治療法」と書いたのは、いわゆるガイドラインが推奨する「標準療法」には経口免疫療法は今のところ入っていないからです。まだ研究段階だから、というのがその理由です。でも実際には巷にはすでに「食べて治す」経口免疫療法を取りいれている医師もたくさんいらっしゃいます。(ギャオとQくんが受診する医師は全部で4人いらっしゃるのですが、全員が(除去だけではなく)それぞれ少しずつ違う「経口免疫療法」を取り入れてらっしゃいます。)

以下に書くことはは"Luxel流"の経口免疫療法において重要なことなので、
必ず理解した上で、ご自身のお子さんをどうするか、決めてください。

"標準的療法"との違いは2つあります。
1つ目は、「準備編1」にも書いたように、
ステロイドを(極力)使わない
という点です。
2つ目は
「アレルゲン食品の食物負荷試験」の時期
について。
この2つはリンクしています。

食物負荷試験とは
①血液検査やプリックテストで割り出したアレルゲン候補食品をあえて食べさせてみて、「本当にアレルギー反応が起きるか」を確かめるとともに、
②一度、アナフィラキシーを起こした食品の許容量がどのくらいか(=どのくらいの量までならまでアナフィラキシーショックが起きないか)を調べるため
に行います。
(ガイドラインにある3つ目の目的:アレルゲン候補食品を食べさせて、皮疹が出るか?については外しました。理由は後述。)

さて、食物負荷試験ですが、
この検査は経口免疫療法においては重要で、エピペンの準備とも絡みます。

現在のところ、医学的に適切な方法として
「負荷試験によってアレルゲンに反応する量を求め」、その量をもとに「安全を十分に見込んだ、反応量よりかなり少ない量から経口免疫療法をはじめる」ということになります。

そして、
食物負荷試験も経口免疫療法も、アレルゲン食品をあえて直接食べさせてみる訳ですから、アナフィラキシーショックを起こす可能性はかなりあります。
少なくとも一度アナフィラキシーショックを起こした食品については、次に食べたとき、相当な確率でアナフィラキシーが起きますし、
「まだ食べたことがなく、アナフィラキシーを起こしていない食品」でもIgEが陽性の食品については、最初に食べたときに、アナフィラキシーを起こす可能性があります。
ですから、アナフィラキシーショックのほぼ唯一の治療薬であるエピペン(中身はアドレナリン)は必携です。

経口負荷試験では「アナフィラキシーはほぼ必発」と考えるべきなので、
エピペンが自宅用に処方されていようが(=体重15kg以上)、いまいが(=15kg未満)、
試験は医師の監督の元で実施される必要があります(※)
医師ならば、いざアナフィラキシーが起きた時にアドレナリン(エピペンの成分と同じ)を注射して確実に対処してくれます。

※ 現実には「誤食」が負荷試験がわりになってしまうことも、ままあります、、、f(- -;) 「人間はミスをする生き物」です。どんなに注意していても、親だって間違います(文字の小さな成分表を見誤る、とか)。起きてしまった誤食は仕方ありませんので、そこから有益な情報(摂取したアレルゲンの量や性状など)をとって次(=治療)に活かすわけで、、、、で、ふと思ったんです。「これって、負荷試験の簡易版じゃないの?」って。 違いは「(アナフィラキシー対策の)準備をしているか/していないか」だけ。 だったら、「準備してトライ」した方がいいですよね?

しかし、「医師の元で負荷試験を」と言っても、Qくんみたいに数十個のアレルゲン候補が血液検査で見つかっている場合、全ての食品について、入院 or 外来で負荷試験をすることは不可能。
それに、「負荷試験→経口免疫療法(緩徐法)」という流れで治療するのは、どうやら3〜5種類のアレルゲンを想定しているようなのです。実際、「(同一人で)どのくらい多種類のアレルゲンを治療できたか」という論文はありません。Luxel家も免疫療法で解除したアレルゲンは「牛乳・小麦・卵」の3つで、4年かかっています。残るは「そば、ナッツ類(ピーナッツ、カシューナッツ、アーモンド、クルミ、マカダミアナッツ、ヘーゼルナッツ)・・・」と、今でもまだまだたくさんあります。(うち、カシューナッツはアナフィラキシー起してます。orz)いったい何歳までかかるんでしょう、、、?
(準備編1)で見ていただいたQ君の検査結果にある、IgE陽性の食品なんて、いったい何十個あるのか?ってくらいで、「3才から一個一個順番に経口免疫療法やってたんじゃ、間に合わないよぅ〜〜 (T T)」てなもんでした。
なので、「安全だろう」と目される食品から順に、エピペンをされる前でも「見切り発車」で、自宅でトライしていきました。(これはLuxelの独断でやった訳ではありません。誤食が契機になったり、K先生と相談しながら、「次はこの食品を試してみようか?」と相談しながら食べさせていきました。この経緯や判断基準は、別記事に詳しく書きます。)

ちなみに、アレルギー学会のガイドラインにエピペンと食物負荷試験について記載があります。
ガイドラインは日本アレルギー学会のHPから、「食物アレルギー診療ガイドライン 2012年版」がみられます。
http://www.jspaci.jp/jpgfa2012/chap07.html
ぜひ、一度ご覧になってみてください。

<注釈>このガイドラインは日本アレルギー学会に所属する医師(実際には策定委員会などガイドライン制作部の医師)の総意(=合意を得られた内容)の結果としての治療法です。ガイドラインの治療(標準治療)というのは、データがきちんと出た内容のみになるので、経口免疫療法のような先進的な治療はまだ入ってきていません。が、その分、一般的な安全性は担保されています。ただし、食物アレルギーの場合、これまで長いあいだ標準治療=除去療法だったため、「除去は安全。ただし、誤食がない限り。」でした。現在、標準療法とされている「除去」よりも、研究中の経口免疫療法の方が「誤食による危険率は下がり」&「治癒率は上がる」と期待されており、それを証明する研究結果が続々と発表されてきています。なので、すでに一足早く経口免疫療法に取り組んでいる開業医のお医者さんもたくさんいらっしゃいます。こういう取り組みは、往々にして開業の先生方の方が早かったりします。ガイドライン側も、早く経口免疫療法を標準治療に落とし込むために、さらにデータを充実させるとともに、具体的な統一プロトコール作りの検討がなされていくことと思いいます。

その日本アレルギー学会や小児アレルギー学会が提唱するガイドラインの治療法を、
私はそのままには採用しませんでした。その理由は2つ。
ひとつには、上に書いたように、「アレルゲン除去よりも経口免疫療法の方が、根治を期待できること。すくなくとも誤食のリスクを下げることができる」と見込めること。
そして、もう一つは、
(上記のサイトの「診断と検査」の章を見ていただければわかると思いますが、)
ガイドライン治療は実質、ステロイド外用が必須となっているからです。

ガイドラインは、「アレルゲン候補食品を食べさせて、皮膚の症状の有無を見て診断できるように、
食物負荷試験の前に、まずはステロイドで皮膚をきれいにしてから来なさい」ということ言っているのです。

食物アレルギーの子はアトピー性皮膚炎を非常に高い割合で併発しています。特に乳幼時期の併発率は高く、9割という報告もあります。これでは「スキンケアをしてきれいに」ということは、「ステロイドを使ってでも、きれいに」ということを意味します。
実際の乳幼児の湿疹は、保湿や、このブログでご紹介している入浴調節法だけで
治癒する子もいます(ご報告をくださったママさん方、ありがとうございます!)
軽症のお子さんには、保湿と入浴調節だけで湿疹がなくなってもおかしくありません。
でも、中等度〜重症のお子さんは、保湿と入浴調節、それに消毒法(イソジン)だけでは
湿疹は治癒しないと思います。(逆に言うと、ステロイド以外の方法で治らなければ、中等度か重症だと考えて差し支えありません。イソジン消毒は感染などによって悪化させないために行います。)
このような子たちの皮膚を「0才できれいにしましょう」「1才できれいいしましょう」というのならば、ステロイドを使う以外に方法はありません。
(中等度ならば2才のあいだに、重症のお子さんは3才のあいだに治る、といった感じです。詳しくは後述。)

負荷試験準備のためのステロイドについては、Luxelも少々悩みました。

食物除去の必要があるのか、本当に食べられない食品はどれなのか知りたい。
負荷試験は受けたい。
でもギャオで痛い目をみたステロイドをQくんに使うことはしたくない。

乳児湿疹や乳幼児アトピーの治療にステロイドを使うとなると、かなり長期(=年単位)に渡り塗ることになるので、私の中に「アトピーを治すために、積極的に塗る」という選択肢はもうありません。
でも、
「負荷試験のために」期間限定で塗るか、塗らないか?
これは悩ましかったです。(悪魔の誘惑?)

「試験のために、数週間のあいだだけ塗る?塗らない?」

うーーーーん、、、、

ステロイドは使えば使うほど、Th2型の免疫(=アレルギーの一翼を担う免疫応答)を助長してしまう性質があります。(動物実験では、これはほぼ確実)
なので、「食物アレルギーを治す目的で検査のために使った」ら、「かえってアレルギーをひどくしてしまった」という可能性もあるわけで、、、、

それに、血液検査で検出されたIgE陽性のアレルゲンは1個や2個ではなく、たくさんありました。
なので、「負荷試験のために、皮膚をきれいに」と言われると、
「1つのアレルゲン候補の負荷試験」が終わったら次、それが終わったらまた次、、、となってしまい、「ステロイドずっと塗布」と同じになってしまう。。。。これではなんのために今までステロイドを使わず頑張ってきたのかわかりません。

で、結局、試験だけのためにステロイドを塗ってまでして皮膚をきれいにするのは、やめました
ちなみにガイドラインでは、「経口負荷試験は○才までにやれ」という指示はありません。、
ならば、「試験の時期を遅くして、試験のときに皮膚がキレイになっていれば、問題ない訳よね ♪」と結論。

それに、『アトピーが治っていない』ということは、『この子の体の中では、まだ Th2型・アレルギー型の炎症が治まっていない=アレルギー型の免疫が優勢』ということを意味しているのだから、下手にアレルゲンを食べさせるとかえってアレルギーがひどくなる可能性がある。
と考えました。(⇦あくまで「可能性」であって「実際に、危険かどうか」はわからないです。データないし。)
それに「どうせ15kgを超えないとエピペンを処方してもらえないのだから、 それまでは小児アレルギー専門医のところで食物負荷試験をしてもらう必要はまだない」
と判断しました。(判断後については、後で述べます)

ちなみに、アトピー/湿疹が出ていない、食物アレルギーだけのお子さんは普通に小児科に行って、負荷試験を受け、食べさせて治す方針の先生を選べばいいのです。現在、すでに経口免疫療法を治療に取り入れてる先生は結構大勢いらっしゃると思います。

でも、今、このブログを見に来られている方はQ君同様、お子さんにアトピーがある方ですよね?
(それにプラス、食物アレルギーが判明してどうしたら良いか困っている方)

みなさん、(ステロイドを使わない)アトピーの主治医はなんとか見つけられている、と仮定ますが、
「食物アレルギーを、ステロイド外用剤は使わずに、少しずつ食べさせて治」してくれる医師の数は非常に少ないと思います。(というか、皆無に近いのでは。。。。f(- -;)

たいていは「治すのはステロイドを使って皮膚を綺麗にしてからだね。じゃないと判定ができないから」と言われてしまいます。
でも、実際にはステロイドを長く使ってしまうと アトピーが治るのが遅くなってしまう。。。二律背反。

アレルギー専門医の先生方は、おもに成人のアトピー患者に起きている「ステロイドの依存性と断薬時のリバウンド」については全くご存知ありません。アレルギー学会のトップ層の方はっきり否定してらっしゃいます。その理由は皮膚科学会が否定しているからで、アレルギー学会はそれに追随しています。この2つの学会両方に入っている医師はかなりの数います。「皮膚科学会の判断」が「アレルギー学会の判断」として引用されることに不思議はありません。(むしろこの2つの学会の判断が異なったら、大きな論争になると思います。)
皮膚科学会は1990年代にステロイド裁判が起こった際に、原因を究明するのでなく、問題自体を黙殺しました。そのときの経緯が、今現在の「ステロイド薬害」の被害者と言える患者さんたちのことを不自然に無視する学会の態度につながっているように思います。
食物アレルギーを診る医師は大きくわけて、小児科医アレルギー専門医の2つです。(ここがアトピーと違います。小児アトピーを診るのは小児科医、アレルギー専門医、そして皮膚科医です。)小児科もアレルギー専門医も、成人に多いステロイド依存やステロイド皮膚症を見る機会は皆無と言っていいでしょう。彼らの眼中に、ステロイド外用剤の依存や超長期使用の副作用は入っていません。というのは、子供が成長して小児科の対象年齢(0〜15才)をはずれると、病院に来なくなるからです。フォローできなくなったその後の結果まで、彼らは責任を負えるでしょうか・・・?

ちなみに、ステロイド外用剤を44週間以上使用した場合の影響についての研究は、存在しません。未知数です。私は自分の目で見た我が子や弟のアトピーの経過と、他の小児・成人患者さんの脱ステしたときの話を総合して、「小児期のステロイドは成長後の皮膚に不可逆的な影響を与えるのでは、、、?」と考えています。脱ステ医によれば、「ステロイドに耐性を示し、脱ステを余儀なくされるのはおそらく患者のうち1割程度」とのこと。でも、私の弟のように「脱ステまではいっていないが、自分で工夫してステロイドの使用量を減らしている=治ってはいない」という人は「かなりいる」と思います。弟は中高大学生〜就職したばかりの時期(つまり15年間くらい)は痒みでたいへんそうでした。(中高生のときは毎日のようにステロイドを塗ってた。私は手の届かない背中塗り係でした。苦笑)
でも、(当時)三十路なかばの彼に「最近どう?」と聞いたら、「ステロイドはあんまりよくなかった。結局、どれだけ塗っても、またすぐアトピーでるし。今はステロイド以外でいろいろ生活の工夫(石鹸とか入浴とか)をしてる。そうすると、ステロイドの使用量はかなり減るし、肌の調子もいい。年に2、3回はステロイド使うけどね。」とのことでした。それでも彼曰く「僕の肌は、絶対、普通じゃないと思う。ちょっとした刺激や変化で、かゆみがぶり返してしまう」。ステロイドを塗ったからそんな過敏な皮膚になったのだ、と証明することはできない。アトピーでステロイドを使わずにきた成人患者は皆無。でも、多くの脱ステを試みた患者さんは、そう思っています。

<この件に関して、非常に参考になる成人アトピーの当事者の方のブログをご紹介します。>
http://atopysan.hatenablog.com/entry/2016/04/30/%E7%9A%AE%E8%86%9A%E3%81%AE%E8%A8%98%E6%86%B6
この方のブログを読んで、私はものすごく感銘をうけました。 その簡潔かつ的を射た文章、そして美麗で詳細なサイト!なにより参考文献をきちんと明示しておられます。(私はけっこう端折りぎみでして、、、反省です。)
論理的・科学的な考証、という点においては、以前にご紹介した安藤直子さんのサイトと双璧だと思います。Luxelの考えはこの方の考えともほぼ同じです。というか、分子生物学を学んだ人間の見解は、一致せざるをえないのだと思います。これ以外の結論を、私は思いつきません。
私は我が子のアトピーで脱ステを、この方は自身の成人アトピーで脱ステを実践なさった方で、違いといえば「小児か成人か」です。でも、同じような現象を経験し、同じような結論に達しました。

話をもとの食物アレルギーにもどして、
「では、ステロイド外用薬を使わずに、負荷試験を受けるには、どうしたら?」
ですよね。。。。両者を両立させるためには
検査の「時期」が大事になってきます。

「ステロイドを使わなければ、ほとんどのお子さんのアトピー/湿疹は3歳までにほぼ治ります」
このことは脱ステロイドを支援する医師のお一人が持ってらっしゃるデータに端的に表れていました。(←講演会で拝見した、荒削りなデータで、このデータ一つだけで論文にするのは難しい、と感じましたが、非常に価値のあるデータだと思いました。n=300程度だったと記憶。まぁまぁな数です。)

そのデータを見ると、(全員とはいいませんが)8割弱くらいのお子さんは3歳の誕生日までに、残りの2割も3歳台でほとんど治るのです。(これは講演をメモした私のノートに記載の数字です。たぶん、それほど間違ってはないと思います。)
そして、そのデータはステロイド使用群/不使用群でどちらが早く治癒するか?の比較もしていました。
なんと。
ステロイド不使用群の方が、半年から1年ほど早く、使用群よりも早く治癒していたのです!
(逆に言うと、ステロイドを使っていても半年〜1年ほど遅れて治癒する、とも言えますが、、、
私としては「そうかな?」と思っています。「そうではなかった」人間(弟)が身内にいて、我が子(ギャオ)や知人の息子さんの経験などから考えて、「ステロイドを使っても、全員治るわけじゃない。」そのよう思えるのです。)

私にはこの結果は当然のことと思えました。

ギャオのときの経験があったからです。
ギャオは2歳前にステロイドを中止して、治癒するのに4年間(=6歳まで)かかりました。
これに対し、不使用のQ君は1歳半手前で治癒しました。
(サンプル数としては各群「n=1」なので何も言えないレベルですが、上記のデータには沿った結果です。)

もちろん、このデータはこの先生の病院に訪れた子のデータですから、治療開始年齢はまちまちで、前医の治療がどうだったか、どの程度のステロイドをどのくらいの期間使っていたか、など、細かく群わけされていたわけではありません。なので「荒っぽい=そのまま論文に載せられるレベルではない」と評価しました。
 でも、そのデータの示す傾向は真実だろう、と私は自身の経験に照らし合わせて評価しました。

ちなみにこのデータから、「どうしても、ステロイド無しじゃムリ!耐えられない!」というお母さんは、ステロイドを使われても。その判断は誤りではありません。だって、「ステロイドを使用しても、半年〜1年遅れてアトピーは治る」わけですから。「ステロイド使って、いったん湿疹を治した方がメリットがある」とお母さんがすれば、それは「間違い」ではないのです。
(乳児湿疹がひどい子は、そりゃもー酷いですから。。。このあたり、一概に「ダメ!ステロイドは!」とは私には言えませんし)
大事なのは、デメリット/メリットがあること、まだまだステロイドにはわからない部分があることをを知った上で「使う」。そして使ったことを「忘れない」ことだと思います。人間は、その時点でわかっていることだけで判断せざるを得ない、「その時点での最善」で判断するしかない生き物なのですから、、、。

最近、アトピーの「経皮感作」モデルが医師の間で流行してますね。
「だから、ステロイドを使って、皮膚のバリアを閉じなければ、アレルゲンに感作するよ」「喘息や食物アレルギーになっちゃよ」と医師は親を説得します。
でもそれは「嘘」です。それは「医師の予測」にすぎません。
なぜ「嘘」かというと、そんな研究結果は存在しないからなのです。
「ステロイドを使って、湿疹を治し、皮膚バリアを閉じてやれば、食物アレルギーや喘息にならない」ことを指し示すデータは、存在しません。
アトピーの子で「生まれてからずっとステロイドを使わない子」と「これまでステロイドを使ってきた子」で比較をしなくてはならないからです。前者はその数が極めて少ない(←Qくんは、珍しい「その一人」です。笑)。それゆえに、臨床試験が成立しない。

そもそも「経皮感作」説自体、「あれは、一種の流行だよ」とその医師自身が言っています。「新しいこと(=経皮感作モデル)を提唱すれば研究費が降りやすいから」だそうです。けっして「新しい発見」=真実、ではないのです。「新しい発見」イコール「比重論的に、重要」であることを意味しません。(新聞報道とか、よくこのあたりを誤解して報道してます。)
つまり
「経皮感作はおこるかもしれない。でも、それが大きな原因、というわけではない」ということです。おそらく経皮感作がアトピーの悪化の原因ではありません。(とLuxelは考えています。)
なぜならば。
「ハウスダスト=クラス6(=IgE振り切れ!)」のギャオが「アトピーだ」と傍目にわかるのは1年のうち3週間くらい。ちょうど今の時期です。逆にいえば、一年のほとんどは、アトピーだと見た目にはわからない程度。本人曰く「少し痒いときもあるけど、がまんできない痒さじゃないし。」とのこと。搔きむしることが年に1、2回ありますが、その程度です。亜鉛華軟膏かモクタールの残りを塗ると、1週間くらい良くなります。
「経費感作がアトピーや食物アレルギーの主因じゃないと思う」については、また別の記事を用意します。乞うご期待!)

上記の医師のデータが正しいとして、
ステロイドを(極力)使わずに乳児湿疹をやりすごすと、3歳ごろまでには治癒する。
エピペンを処方してもらえるのが丁度このくらいの年齢です。(体重15kg)

アトピーが治れば、負荷試験をするためにわざわざステロイドを塗らなくてもよくなります。
それに「アトピーが治った」ということは「アレルギー体質が軽快した」ということであり、これ以降、新たに経口投与した物質(食物)に感作したり、すでに感作している食品へのアレルギーをひどくする確率はかなり低くなっているはずです。(←Luxel予想ですが。)

※このあたり、つまり、「皮膚の状態と体内の免疫の状態」については
最近かなり論文が出てきていて、Luxelの予想「皮膚は免疫の窓(=免疫の状態をモニターできる)」は当たっていました。(^ ^)v

簡単にいうと、
Th2型のサイトカイン(IL-4、IL-5、IL-13)は皮膚のバリア機能を弱める(皮膚を薄くするわけではなく、隙間があく=皮脂分泌⇩、細胞接着分子⇩)ことにより、アトピーをひどくします。
そのTh2型サイトカインはどの細胞が出すか、というと、Th2細胞だけでなく、好酸球、好塩基球、ILC2s(2型自然リンパ球; innate lymphoid cells, group 2)などです。
障害された角化細胞(にかぎらず上皮系の細胞)は"警告分子(alarmin)"としてIL-25やIL-33、それにTSLPを即座に放出し、上記の細胞にTh2型サイトカインを放出させます。
そのほかにも角化細胞はIL-33を受けて、TARCというTh2細胞を呼び寄せる分子を出し、、、

というふうに、2型炎症=アレルギー炎症が次々と拡大していき、アトピーを酷くしていってしまう、という悪循環があることがわかっています。
(ただし、それがいつまで続くか、というとIL-33は腸管においては制御性T細胞というアレルギーを抑える働きをする細胞を増やす機能があることが、最近報告されています。これが真実であるならば、「アレルギーは自然治癒傾向を持つ」ということになります。これは小児食物アレルギーの現実と符合します。)

逆にいえば、体内の免疫バランスのシーソーが、Th2側から他の方(Th1側とかTreg側)へと傾くと、乳幼児のアトピー性皮膚炎(infantile eczema, atopic eczema)は治るわけです。(⇦注、皮膚は治るけど、アレルギー体質自体が治ったわけではない。)

それと、経口免疫療法を「いつ始めるべきか」については臨床研究者の間でも模索中です。
逆に言えば、いつでもいいわけで、
Luxelは「3歳でも遅くない」と判断しました。

つまり
「3歳まではステロイドを(極力)使わずにアトピーが治るのを待って、 皮膚が治ってから食物負荷試験を行い、本格的に食物アレルギーの治療(経口免疫療法)を始める」
これならステロイドを使わずにすみます。
3歳というのは丁度、(おそらく)免疫学的な体質が変わる時期でもあるし、15kgに達してエピペンの処方が可能になる時期でもあります。

とはいえ、「3歳まで何もしない」というのは時間がもったいない。
何故かというと、「経口免疫療法(OIT)」には年齢制限があるかもしれないのです。
OIT(SOTI)急速法の大家・栗原先生によれば、入院しておこなう急速法の適応年齢は5・6才とのことです。
急速法でアナフィラキシーを起こすと、子供にとって苦痛が大きく、その食品が恐怖の対象となり嫌いになってしまい、治療継続ができなくなってしまいます。そこを言いきかせて理性で乗り越てもらわねばならないので、言って聞かせることができる5、6才になって、やっと治療に取り組めるそうです。

一方、成人になるとT細胞をつくる(正確には「教育する」)胸腺が萎縮して機能を失うとされています。つまり、胸腺からの新しいT細胞の供給はほとんど止まってしまいます。それまで体内にいなかった「アレルギーを抑えるタイプのT細胞」を新たに誘導する」というのができなくなります。おそらく。
何歳まで経口免疫療法が有効かを示すデータは多くはないのですが、上記ガイドラインのサイトのデータを見ればわかるとおり、アナフィラキシーの頻度や食物アレルギーの有病率からは、6歳を超えると食物アレルギーはかなり(自然には)治りづらくなってしまいます。(もちろん、成人にも経口免疫療法は有効かもしれないのですが、データが少ないので確たることはいえない、というのと、若干の論文から小児期よりは治癒しにくいと私は推定しています。)

上記のことを考えると、経口免疫療法で確実な治癒を目指すためは、開始は遅すぎない方がいい。

しかし、早すぎてもアレルギーを強める結果になるかもしれません。
上記にも書きましたが、アトピーが出ている子のほとんど(9割がた)がアレルギー体質なのです。
([↑] 保湿や入浴法でとことん皮脂を温存した上で、それでもアトピーが出ているならアレルギー体質である可能性が高い。血液検査すれば、アレルギー体質かどうか、一目瞭然です。ぜひ血液検査をお勧めします。)

少なくとも0才台はアナフィラキシーを起こしやすい時期ですので、「リスクのある食品は除去」し、
1才台はアトピーの治り具合を勘案して、リスクの小さい食品から離乳食として摂取にトライするのがいい、とLuxelは考えています。(消化管の専門家の先生によれば、「腸管が発達して、細胞と細胞の隙間が閉じるのは1才頃」とのことです。)

※もし1歳台になっても「アトピーがますます酷くなる」なら、すでに食べている食品がアトピーを引き起こしている可能性はあります。その時は「もしかしたらこの食品が、、、?」と疑っている食品を1〜2週間程度除去してもかまいません(卒乳している前提で。)
でも「アトピーが治癒傾向にある」「アナフィラキシーや腹痛、喘鳴がおこらない」ならば、今食べている食品はアレルゲンではありませんので、どうぞ気にせず食べさせてください。

医師の中には「検査しなくてよい。アトピーが出ていても、何も気にする必要はない。生後4ヶ月から離乳食でまんべんなく食べさせなさい」という方針の人もいます。でもこれではアナフィラキシーは防げないと思うのです。上記の医師の指導に従うのと、「検査をせず、0歳で食べさせたら、いきなりアナフィラキシーを起こして驚いた!」というケースって同じですよね?だったら、お医者さんにかかってる意味ないのでは?と思います。

とりあえず、超早期=生後4ヶ月〜0歳台でのIgE陽性のアレルゲン食品の摂取がオーケイかどうか(アナフィラキシーやアレルギーを起こさないか)は、「賭け」の要素が高くなる、と思います。
リスクの高いアレルゲン食品に対する本格的な経口免疫療法(緩徐法←自宅で行う)の開始は、エピペンを処方してもらえる3才前後(=体重15kg超え)から、とするのが安全、と考えます。

まとめると、
本格的な経口免疫療法は、3才から6才が最適」ということになります。
アトピーが治るのを待って(一部はまだアトピーが残っている年齢のうちから、早めに)、OITを計画的に、遅滞なく実施しなくてはなりません。

したがって、Luxel家版の対策はこうなります。

○ 血液検査を離乳食開始前の生後6ヶ月前半に実施。
(別に生後5ヶ月でもいいのですが、あまりに早い(3ヶ月とか)と、まだ抗体が少なく、検出可能な量に達していない可能性がある)

○ 結果が出るのをまって、離乳食の開始。(生後6ヶ月後半)
保育園に入園したので、これはもう仕方ありませんでした。(結果的に悪いことはありませんでしたが。)

○ 離乳食前の検査結果でIgEが陽性のものは(クラス1でも)いったん除去。
 それまで完全母乳でしたが、牛乳が陽性だったので、最初からミルクをアレルギー対応ミルクに変更。
(我が家は明治ミルフィーでした。今は森永も同じようなのを出してますね。それでも下痢をしたり吐いたり、ゼイゼイ言う子はもっと牛乳タンパクのサイズを小さくした特殊な医療用ミルクを使います。)

 でもたぶん、アレルゲン除去の離乳食に切り替えてもアトピーが治らない子の方が多いでしょう。アトピー、すなわちアレルギー性の乳児湿疹は生後1ヶ月ー3ヶ月頃から出始め、ピークは0才後半?1才前半までくらいです。(ステロイドを使わなければ。このピークをどう乗り越えるか、については記事をあらためます。)だいたいですが、早い時期に出始める子ほどアトピーとしては重症になります。

○ 母乳育児のお子さんでアトピーがひどい場合は断乳も視野にいれる。
 (Luxelのように、「お試し断乳」をしてもいいかもしれません。搾乳が大変ですが、、、メデラ社の自動搾乳器がオススメです。←情報古いかも。もっといい機種が出てるかも。)
 お母さんにアレルギー疾患がある場合には、断乳が有効な確率は高い、と予想しています。(今、アレルギー症状が出てるお母さんの場合は特に。)

 これはLuxelの勝手な予測ではなく、母乳育児とアレルギーの専門家である下条直樹先生(千葉大医学部)のご見解でもあります。(学会でお目にかかりました。)

○ 腸管の隙間が閉じる、とされる1才を超えたら、「 IgE陽性のため除去」とした食品のうち、
最もクラスの低いもの(=相対的にクラスの低いもの)から順に少しずつ食べさせて、増量していき安全を確認する。(=簡易な負荷試験、という意味合いもある。)
同じくらいのクラス(抗体量)ならば、使用頻度の高い食品を優先する。その方が調理の幅が広がって楽に。
もし不幸にしてアナフィラキシーが起きてしまったら、その食品は「除去」となります。(永久に、ではないのでご安心を。)
特に、「IgE陽性食品が1〜3個くらいしかない」状態なら、アナフィラキシーリスクはむしろ高い。こういうお子さんは、やはり3歳になるのをまって入院 or 外来で負荷試験を受けた方が良いと思います。

○リスクの高いアレルゲン食品(アナフィラキシーをすでに起こした食品 or IgE値が高い食品)については、アトピーが治ってから、ちゃんと「食物負荷試験(@外来 or 入院)」を受けて、許容量を確定してから経口免疫療法を初めてください。(結果的に負荷試験は3歳前後になると思います。)

サラっと書きましたが、この「相対的にクラスの低いIgE陽性食品」を最初に食べさせるときも、十分注意してください。エピペンが手元にない訳ですから、アナフィラキシーが起こったら非常に危険です。
一番安心なのはもちろん入院して試すことですが、入院負荷試験は通常、
(1)IgEのクラスが高い食品を試す場合、

(2) 一度アナフィラキシーを起こした食品を再トライするとき
に実施されることがほとんどなのです。

ですから、「初回から入院してトライ」というのはまずできません。
(それに、食物アレルギーの入院負荷試験を実施する病院は、皮膚に関しては確実に「標準療法」つまりステロイドを使います。使わないと入院を認めてくれません。)
かかりつけ医によっては「食品を持ってきて、病院の待ち合いで試していいですよ。」と言ってくれる先生もいます。それならぜひ、来院してトライさせてもらってください。

このあたりの、「アトピーが治る前に、IgE陽性食品をトライするか/しないか、どの食品からトライするか?」については別記事にします。(すみません、根性きれました。。。)
引き続きお待ちください。m(_ _)m 



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<おまけ>
「乳幼児アトピーは3歳までに治る」というデータを出した医師の属する医師グループ(脱ステをサポートしてきた医師の方々)が最近、論文をまとめました。まだ雑誌に受理前の論文のデータのようです。(参考文献が挙げられているところをみると、投稿中なのでは? 論文のacceptまでは何年もかかることもあります。特にこれまでの常識を覆す論文にはその傾向があります。ですから先にデータを公開してくださったのでしょう。)ちなみに「ステロイド不使用」群とは「まったくステロイドを使用しなかった人」ではなく、「6ヶ月のみ使用を禁じた」群です。(試験開始前までは使っていた)

参考サイト1
http://steroid-withdrawal.weebly.com/1247312486125251245212489124342035129992123751239412356124501248812500125402461530382331782881412398320763694235519266191239832080265242257721578.html
参考サイト2(1の論文のわかりやすい解説です。atopysan様宅サイト)
http://atopysan.hatenablog.com/entry/2016/05/16/%E3%82%B9%E3%83%86%E3%83%AD%E3%82%A4%E3%83%89%E3%82%92%E4%BD%BF%E7%94%A8%E3%81%97%E3%81%AA%E3%81%84%E3%82%A2%E3%83%88%E3%83%94%E3%83%BC%E3%81%AE%E7%B5%8C%E9%81%8E


我が家の経口免疫療法(実践編 その1)〜牛乳&小麦〜 [食物アレルギー対策]

(少し手直しして、再投稿です。2016.6.6)
(再更新 2016.6.7)
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長文しか書けないのは、頭が悪い証拠だよなぁ〜、と思い
常々「なんとかスッキリした文章が書けないものだろうか?」と煩悶しているLuxelです。(本業の方でも同様です。f(_ _;) でもこれが中々。。。)

なので、一番先にみなさんが一番お知りになりたいであろう我が家の経口免疫療法の成績を出します。

<Qくんのアナフィラキシー歴>

① 牛乳(2才9ヶ月頃)、② 小麦(1才11ヶ月)、③ 卵(4才3ヶ月)

<Qくんの現在(経口免疫療法の結果)>

①牛乳、②小麦、③卵
の全てが完全解除

牛乳と小麦は「完全寛解」(=完全に治癒)と言って良いと思います。ここ2年、普通に食べていますが症状は何もおきていません。
ただし、卵については除去を解除はしていますが、「完全寛解」とは言えないと思います。
加熱卵は完全にOKですが、生卵はこれから検討です。
学校給食では、まだ大事をとって解除していません(除去の完全解除は家庭でだけ)。(←主治医のDr.MTの指示で。)
たまに体調が悪かったり、しばらく食べるのをサボってたりすると、まだ口腔に痒みが出たりしています。お腹が痛くなることはなくなったようです。


ちなみに寛解と判断した量(=主治医が設定したゴール)は、
牛乳:200 mL
小麦:半束(約180本、ゆでて約90g、乾麺の状態で25g)
卵:全卵1個(今では目玉焼き1個ぺろり、です。大好物。)

============================================
<本編の前書き(必ずお読みください)>

前の記事が「準備編1」となっていたので、この記事は「準備編2」か!と思われたと思いますが、ふふふ、違います。
「準備編」の説明は後回しにして、「実践編(実施記録)」に突入します。

というのは、公開を待ってくださってるお母さん方が多いようなので。。。
お母さん方のニーズは「理屈はともかく、方法と結果を知りたい!」だと思うので。

とはいえ、「万人に有効な治療法」を考案できるような膨大なデータをLuxelは持ちません。
あくまでも「我が子に実施した方法と結果」、つまりこの記事は「Luxel流の治療の実施記録」であり、試行錯誤や失敗もそのまま書きます。
(自身の経験や失敗を総括して、「第三子目が生まれるとしたら、自分だったらこうする」という「まとめ」記事を書くつもりです。)

以下、このブログで、再々書いている注意書きです。
みなさんには、以下のことを念頭に、私のブログをお読みいただきたいのです。

(これは毎回、悩むところなのですが、、、)
Luxelは医師ではないので、皆さんに「こうしなさい」と言うことは基本的にはありません。
でも、できたら苦しい思いをする人が少しでも減ればいいなぁ、とは思っていて、このブログを公開しています。もし有益な情報を提供できているならば、幸いです。

基本、医師でない自分は他人に「○○しなさい」という資格はない、と思ってます。
医師ならば、独自の見解に基づき、患者さんに「こうしなさい」と指導/指示をするのは職務のうちです。
(たまに「これってトンデモ療法だよな〜?」とか「学術的な裏付けはあるのか?」と思うような、医師の手による本を見かけることがありますが、あれとて違法ではありません。ただし、そのトンデモ療法に従った結果、被害を被った場合はその治療をした医師を訴えることは可能です。そういう治療法はまず間違いなくガイドラインに外れているので。ただ、勝てるかどうかはこれまた別の話。)

でも、私に「医師としての資格」はないけど、そこそこ生物学(免疫学)&医学の知識はある(優秀とはとても言えないとは思いますが)というのと、自分が「母親の立場」でもあることから、「おそらく、私の(子供での)経験を、自分の専門知識を加味して書くことは、専門外の普通の人に対して有益な情報発信になるのではないか」と思い、このブログを書いています。(ちなみに、学位は博士(医学)です。)

でも、私のブログの情報を元に何かをしたらかえって悪化した、という人がいたとしても、私は責任の取りようもない。(でも、そういう方は、多くの場合、私には直接言ってこないのですよね。。。)
そんな微妙な、綱渡りのような心境で、このブログを公開しています。

もちろん、アトピーやアレルギーの症状は一人一人異なるのが当然で、すべての人に有益な情報となり得ているか、と言われると甚だ心もとありません(→※)。みなさまもそのつもりでどうぞこのブログをご覧になってください。
(※)だから、私の当ブログは成人のアトピー性皮膚炎は対象にしていないのです。ときどき間違われることがあるのですが、、、、小児アトピー&食物アレルギー限定です。Luxel自身には成人型アトピーの経験がなく、また、成人型アトピーの症状は小児のそれに比べて非常に多様であり、ほぼ全員がステロイド使用経験有り、ということもあって、もう全然私に語れるようなものではないのです。明らかにLuxelの守備範囲を超えています。それにくらべたら、小児の場合はほぼ「自然発症」ですし、ステロイドの使用歴があったとしても、多くの場合、それほど対した期間ではありません。

Luxelは、ここではあくまで一人の母親として自分の経験談を書いています。そして、自身の経験と専門領域の知識を総合して発展させて考え、「こうした方がいい、とLuxelは思う」とお伝えすることはあると思います。
私がこれだけはどうしても伝えたい!と思ったときには「こうしたら良いと思う」より強めの「○○するべき」という書き方をすることもありえます。
しかし、それとて何ら強制力を有するものではありません。というのは、その結果について何ら責任をとれる立場にはないからです。

Luxelのやり方を真似したり、意見を採用したりするかどうかは、皆様ご自身がさまざまな情報と照らし合せて考え、判断なさってくださるようお願いいたします。(つまりは「自己責任でお願いします」ということなのです。。。。この言葉、好きではありませんが。)

Luxelにとって自分の子どもの食物アレルギーは「どうしても直したい病気」であるように、皆さんにとっても自身のお子さんはかけがえのない存在だと思います。日本のたいていの家庭では、母親が子供の健康管理を預かっていますが、子どもにアトピーやアレルギーがあると、その責任は格段に重くなります。これは子どもという存在を背負ったことのある人でないと分からないと思いますが、私がここに我が家の情報や科学情報を公開しているのは、そういった重責を少しでも軽くしたい、お母さんたちに判断のよすがを提供したい、という気持ちからです。

(だから、是非、有害情報もお寄せください。「Luxelさんのブログの方法でやったけど、うまくいかなかった、悪化した」という情報です。危険性は少しでも知っておきたいのです。お手数ですが、お知らせいただけたら感謝します!)

どんな治療法も、「実施第1号」は存在します。(←つまり、うちのQくんは「我が家の民間療法の第1号」)
特に、ミリグラム単位の極微量に反応する重度のアレルギーの子どもの治療については、まだ論文はでていません(そのはずです。調査不足だったらすみません。)。ですので、当然、治療法も確立していません。これから開発されるべき治療法です。Luxelの取り組みは、いわば「今の時点では治療法が確立してない」けれど、「このままじゃ、うちの子には間に合わない!」という溝(ギャップ)世代に向けての情報発信です。

そもそも、
医学史を紐解けば、治療法というのは必ずしも医師により考案されたものばかりではありません。
逆に、医師が民間療法に着想を得て開発した治療法は多々あります。(ゲッカーマン療法とか。)
医師の方がここに記すQくんのケースに興味を持たれて、治療法として確立していただけるならば、それが最も望ましい成果です。
(実は、すでに某大学の小児科教授にお話しました。笑われるか、怒られるかするかなー、と思ったのですが、意外にも「へぇーーー、本当ですか!?」と興味を持っていただけた様子でした。この教授も免疫学をバックボーンに持つ方です。実際に新しい治療法として、治験なぞ組んでいただけるとありがたいんですが。。。f(^ ^)

それと、
この記事「実践編1」を参考に、さっそく始めよう!と思っている方はいらっしゃるでしょうか??
もしそうでしたら、ちょっと待ってくださいね。
次の記事でエピペンの使い方をご紹介します(リンク集貼ります)ので、
くれぐれも使用説明書を読むか、ご自身で使い方を確認&準備してから、開始されてください。
Luxelはエピペン完備の状態で経口免疫療法に臨みました。

==============================================


それではいよいよ、本編です。


<経口免疫療法の記録>

① 牛乳
 生後6ヶ月でのRAST検査でIgEが出ていることが判明。この頃はLuxelも当時の主治医のK先生も食物アレルギーのせいでアトピー性皮膚炎が出てると考えていたので、とりあえず牛乳は除去。明治のアレルギーミルク「ミルフィー」(←軽度の牛乳アレルギーの子に使われる商品)を使用。
 3歳間近に体重が15kgに達し、エピペンを処方してもらえたので、当時の主治医S先生の指導のもと、牛乳の経口免疫療法を開始。

 最初の負荷は入院しなくてもよくて、病院の待合室でヨーグルト(←生乳よりもアレルギーを起こしにくい)を試しに小さじの先端にちょん(0.1〜0.2gくらい)と載せ、食べさせて30分。その後また小さじひとさじ(2gくらい)を食べさせ30分経過。何事もなかったので、S先生から「1gから段階的に増やしてみましょう。一週間は同じ量を維持すること。増量の幅は2割以内。」と言われました。

(ヨーグルトの測り方)
※スプーンは毎回同じものを使いました。
1さじ分を測るには、電子秤の上に皿をのっけ、その上にスプーンを載せてゼロ点合わせ(calibration)、そうしてヨーグルトを救って計測。
量が2さじくらいより多くなるとなってきてからはガラスカップを載せてゼロ点合わせして、その後ヨーグルトを入れて秤量、という方法で計測しました。

このとき使った電子秤。
コンパクト 精密 電子 はかり デジタル スケール 0.1g~3000g
http://www.amazon.co.jp/%E3%82%B3%E3%83%B3%E3%83%91%E3%82%AF%E3%83%88-%E3%81%AF%E3%81%8B%E3%82%8A-%E3%83%87%E3%82%B8%E3%82%BF%E3%83%AB-%E3%82%B9%E3%82%B1%E3%83%BC%E3%83%AB-0-1g%EF%BD%9E3000g/dp/B00EB24J5K/ref=sr_1_22?ie=UTF8&qid=1464221639&sr=8-22&keywords=%E9%9B%BB%E5%AD%90%E3%81%AF%E3%81%8B%E3%82%8A

今はタニタからも出てますね。
タニタ デジタルクッキングスケール 2kg(0.1g単位/200gまで) グリーン KD-192-GR
http://www.amazon.co.jp/dp/B0047BATEU/ref=sr_ph?ie=UTF8&qid=1464221795&sr=1&keywords=%E3%83%87%E3%82%B8%E3%82%BF%E3%83%AB%E3%80%80%E3%82%B9%E3%82%B1%E3%83%BC%E3%83%AB+%E3%82%BF%E3%83%8B%E3%82%BF

いやーー、電子天秤が二千円で手に入る時代になったなんて!
(中国製はご自身で正確かどうか確認してからご使用ください。1円玉≒1gです。
もし正しく測れないときは返品交換に応じてくれることが多いようです。)

 1.2、1.5、1.8gと毎週増やしていって、意外なくらい何も起こらなかったので、「これは無症状のアレルゲン=血中に抗体はあっても反応しないアレルゲンじゃないのか?」と思い、調子にのって、毎日1〜2さじずつパカパカ増やしていった結果、、、30gを超えたところ(1週間目くらい)で、腹痛を起こし。。。。
「あーー、やっぱり本当に牛乳アレルギーなんだーーー(←アホか。。。)」orz
(幸い腹痛はひどいものではありませんでした。)

その後は10gに戻し、おそるおそる、(毎日ではなく)週に1回、2割ずつ、地道に増量していきました。(つまり、1週間は同じ量を維持。)それからはアナフィラキシーを起こすことなく無事に31g(=アナフィラキシーを起こした時の量)もクリア。3ヶ月後くらいにはカップ1杯(=約100g)を食べられるようになったので(そして飽きてしまったので f(^_^;)、次は生乳でならすことに。

※ヨーグルトを正確に計り取るには限度があるので、誤差があってもあまり気にしませんでした。
そもそも生体ってファジーだし。毎日のように許容量だってかわる。調子が悪いときは閾値(=反応する量)も変わってしまいます。昨日と同じ量でも、今日はダメ、ということがあって、一定していません。
(季節などの変動する外界の環境に左右されないで、なんとか一定の調子を維持しようとがんばって調節しているのが私たちの体の恒常性維持システム homeostasis 。その結果、誰にでもゆるやかな「揺らぎ」があるのです。)

さて、牛乳の摂取ですが、これは就寝前のミルクを少しずつ牛乳を混ぜて置き換えていく、という方法をとりました。
最初10mLから初めて1週間後に10mLずつ増量していき、6カ月後くらいに200mL全量を生乳で飲めるようになり、牛乳は完全解除、となりました。解除まで9カ月か10カ月くらい(3才半)でした。

 後から考えると、牛乳は非常にスムーズに解除が進んだアレルゲンでした。アナフィラキシーの腹痛もひどいものではなく、許容量も30g前後と大きかったので、寛解に至るまで短期ですみました。アナフィラキシーを起こすタイプのアレルギーとしては軽症だと思います。


② 小麦
 治療前にはアナフィラキシーを起こしたことのない牛乳と異なり、小麦ははっきりと、激烈なアナフィラキシーを起こしたことがあります。急な義母のお葬式のときに、自宅から遠方で到着が夜間だったため、アレルゲン除去対応の離乳食を入手できず、「何か食べさせるものは?」と困り果て、お通夜で出たお弁当の麦ごはんの「米だけ」の部分を選り分けて与えたのです。そしたら、、、
 摂取1時間くらいで嘔吐&下痢でグッタリ。Q君を抱っこしていた旦那の喪服は吐瀉物で惨憺たる有様に。。。orz
この時はエピペン処方前だったので、焦りまくりました。まさか小麦への反応がこんなに厳しいだなんて、、、!

 除去していると普通に健康に生活できてしまうので、つい「このくらい、大丈夫なんじゃないか?」と楽観的になってしまっていたのですが、「安全だろうと思い込むのは危険」なのだ、と思い知らされました。

 そんな、前途多難が予想されるアレルゲン・小麦ですが、S先生と話し合いの結果、「そーめん 0.5cm」から始めることになりました。(ちなみに、「通常はうどん 0.5 cm から始めるのよ」とS先生。やっぱり重症なんですね!?うちの子。。。orz)
牛乳が寛解になってすぐ、小麦の経口投与に入りました。(3才6ヶ月)

 増量方法は、ゆでたそーめんを5cmまでは0.5mmずつ、1週間ごとに増量。5cmを超えたら約2割ずつ増量。約6.5cm、8cm、10cm、、、、と増やして、1本に達したら(←計算してみてちょっと気が遠くなりかけた。。。)、次は1本半、2本、3本、と増やして20本まで(ここまで来るのに1週間分を数えて、ラップに小分けして包んで冷凍庫へ。でも20本あたりで本数で数えるのは労力的に限界に。

 そこで、重量割にしようと、そーめんの一束が何本にあたるか数えたら365本!(根性です!←メーカーさん、わざとこの本数ですか!?)で、乾燥状態で50gであることが判明。
茹でると何グラムになるのか計ったら、180gくらいだと。
なので、茹でた状態で5g(約10本弱相当の重量)からまた2割ずつ1週間ごとに増量してき、
とうとう1年後に100gに。最後の1ヶ月は食パン1枚にトライしました。(といっても、3才児にとって一枚は大量です。なかなか1枚全部は食べてくれない[あせあせ(飛び散る汗)] 期間中、2回くらい1枚丸ごと食べてくれたのでヨシとしました。)

それと、大事(かもしれない)なポイント。
これはLuxel独自の方法なのですが、
毎晩(←ホントは夜じゃない方がいいかも。)、そーめんを食べさせたあと、先に寛解したアレルゲンである牛乳100mLをグィッと飲ませてました。
その狙いは
(1)口中に残った小麦アレルゲンは痒みを誘発してしまう可能性があるので、急いで腸管に洗い流し込んでしまう。
のはもちろんですが、それだけなら水やお茶でもいいはず。あえて牛乳、としたのは
(2)牛乳の経口免疫療法により誘導した経口免疫寛容を強固にし、寛解状態(=治った状態)を恒常的に維持するため。
(3)もし牛乳によって誘導された寛容の仕組みがTreg(制御性T細胞)の誘導であるならば、"bystandar suppression"(=寛容抗原と同時に存在する抗原に対しても、免疫抑制が誘導される現象)が誘導され、より小麦に対する寛容が積極的に誘導されるのではないか、
と期待したためです。

(1)(2)の効果は確かにあると思います。今、Qくんは牛乳については何も気にしない生活です。(まだ卵の後にぐぃっとは飲ませてますが。卵ももう仕上げの時期です。)

これ、大事なことなんですが、
「経口免疫療法(OIT、SOTI)で寛解に達した後、アレルゲン食品の摂取をやめてしまう(=間があく)と、またアレルギーの状態に戻ってしまう」とされています。(これを示唆する論文が出ています。)寛解状態の維持のためには、定期的な摂取(週一摂取、とか)が必要なのです。
幸い、小学校にあがると給食で牛乳が出ますが、我が家では(3)の効果も期待しているので、そーめんや卵の摂取後、かならず牛乳を飲ませてます。

(3)について、効果があったかどうかは証明不能ですが、たくさん過去の論文(動物実験)の結果が人にも当てはまるとすれば、多いに期待できる、と考えています。いずれにせよ、「アレルゲン摂取後の牛乳1杯」は寛容の誘導に益することはあっても、害はないはずです。


そして……
いよいよ手強い敵・卵との長い戦いが始まる。。。!!
次章、乞うご期待!

すいません、やっぱりここまでで長文化してしまったので f(_ _;)
卵編は次回にまわします。

<追記>
「経口免疫療法」についてはご質問受け付けます。
というか、一番助かるのは「読んだ方に、質問してもらうこと」なんです。
本文中には余計なことは書かないで、
読み手が疑問に思ったことを質問してもらう。
私がそれに対する答えを書く。
そうすると他の読者の方にも読みやすいもになるかと思います。

ただし、過去にしていたような「コメント欄にて回答」ではなく
記事中でまとめてご紹介&回答、とさせていただきます。
(個々のコメントにお返事する方式だと他の方が見づらいようなので。)


<アレルゲン食品の写真>
Q君は皮膚症状はでなかったので、地味〜にアレルゲン食品の写真です。

そーめん 12cm = 4cm x 3本
そうめん12cm.jpg

凍結保存用そーめん(3週間分)
3週間分のそうめん.jpg

そーめんカップ(30g程度)
そうめんカップ.jpg

我が家の経口免疫療法(準備編1) [食物アレルギー対策]

すみません、下書き段階で、まちがって「公開」にしてしまったので、再度書き直しての公開です。公開直後に読まれた方はどうぞお読み直しください。

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たいへんお待たせしておりますっ! m(_ _;)m[あせあせ(飛び散る汗)]

最初にLuxel家の現食物アレルギー治療の指針を書いておきます。
これが現時点でのLuxelのベストな結論です。
医師の考えるベストではないと思います。(いちおう)生物系の研究者であるLuxelが、母親として考えた場合のベストです。

[1]離乳時期:普通(4ー6ヶ月頃)で良い。←以前記事に書いた見解と異なります。ありからず。m(_ _)m 根拠は後日、詳述します。

[2]乳児に慢性湿疹やアトピー性皮膚炎が出ているなら、離乳食の開始前に血液検査をする。(←RAST値、総IgE濃度、好酸球(%))
  ●検査で陽性が出ている食材も、離乳食としてごく微量から試して良い。
  ●ただし、アナフィラキシーショックのリスクがあるので、万全の体制をとった上
   で導入する。(=かかりつけ病院を決めておき、開院時間と通院時間・通院経路をあらかじめ
   決めておく)。
  ●もしアナフィラキシーが起きたら、そのアレルゲン食品に関してはしばらく除去。
   エピペンが処方された後に経口免疫療法に取り組む。
   (処方は体重15kg以上で可能=2、3才頃)

[3]ステロイドによる湿疹治療は(極力)行わない。←ここがアレルギー学会の方針とは大きく違います。

現時点で、私が経験と頭を総動員してまとめるとこうなります。
Luxel家に3番目が生まれてアトピーだったらこうする、という対処の内容として書いています。つまりは「Luxel家の覚書」です。(いやもう、3番目はありえない年齢になってしまいましたが。。。)
読んだみなさんがどうなさるかは、これをご参考にした上で、どうぞご自身の頭で考え、取り入れるかどうかをご判断ください。
というのは、Luxel自身は結果について何ら責任を持てないからです(→※)。「このLuxelっていう人はどういう人?」「信じていいの?知識は確かそう?」という視点で検討も行った上で、どうぞご判断ください。

なお、離乳時期については、以前に記事を書いた時点からたくさんの論文が出ており、ほぼ結論がでたので、私も見解が変わりました。(このブログは私的ブログなので、こういう可能性があることを踏まえつつお読みください。)

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さて、本論。

Qくんに施した経口免疫療法の説明をする前に
まずQくんのデータを。
(クリックすると別窓で開きます。)

綸のIgEデータ.jpg


調べたアレルゲンが多くて、見にくいと思いますが、どうぞご勘弁を。。。

このデータを見れば一目瞭然ですが、

非常〜に多くのアレルゲンに感作しています。

※感作=免疫系が抗原を認識して排除に働く、つまりこの場合は、抗原特異的なIgEが作られていることを指す。

こんな感じで、できるだけ多くのアレルゲンについて検査してきました。
毎回同じアレルゲンを検査している訳ではありません。

というのは、検査にひっかかってこないアレルゲンに感作している場合には、「誤食死」の危険があるからです。
でも、1度調べてそのアレルゲン食品に特異的なIgEがでていないことが確認できれば、もう2度と調べることはしません。
「あーよかった!これで安心して食べさせられる。次回の検査では[新月]?[新月]?(=別の食品)を検査しよう!」となります。

しかしアナフィラキシーショックを起こした食品については、残念ながら、当分除去します。(=体重15kgを超えてエピペンが処方されるまで。)
保育園で原因が不明なアナフィラキシーを起こしたことがあったのですが(←血圧性ショックまで起こしててヤバかった!エピペンをうつべき症状でしたが、保育園の先生たちにはその見分けがつかなかったのです。爪が白くなったら血流が落ちて血圧が下がった証拠です。エピペンを即座に打ってください!)
このときは、保育園で当日に出された食事(除去食)の食材について、しらみつぶしに検査しました。

セルの背景が赤くなっているのは、アナフィラキシーを起こした時点から直近の検査値です。
数値が低めでもアナフィラキシーを起こしていることがわかると思います。
Qくんは小麦と牛乳と卵とカシューナッツにアナフィラキシーを起こしたことがあります。
(幸いどれも呼吸困難になることはなく、主症状は腹痛(←かなり激しい。悶絶、という感じ。)でした。)

裏をかえせば、たくさんの種類のIgE抗体(抗原特異的IgE抗体)が検出されても、その多くはアナフィラキシーを起こすわけではない、と言えます。
近年、血中に特異的IgEが出ていても「即・除去を指示」とはならないのは、こういうケースがたくさんあるからです。

「じゃぁ、検査しても無駄なの?」「検査せずに食べさせても、結果的には同じじゃないの?」と思うかもしれませんが、そんなことはありません。
血液検査をすれば、「アナフィラキシーを起こすかもしれないアレルゲン食品の候補」を見つけることができます。
血中に、どの食品にくっつくIgEが血中にあるかがわかるので、その食品をはじめて食べさせる時には万全の準備をしておくことが可能となります。
「もしも、の場合の準備」をしておき、しばらく赤ちゃんの様子を注意深く見守っておくのです。
このような準備とか心構えができる、というのは結構重要なメリットだと思います。

というのは、アナフィラキシーは重篤であればあるほど経過も早く、心停止に至るようなケースでは数分からわずか30分以内に心停止します。(もっと軽くてすむケースのほうが圧倒的に多いわけですが。。。。)
なので、「何かあったときに、ダッシュで対応できる!」ようにしておく心の準備は意外に大事だと思います。本当に急激なアナフィラキシーが起きた場合には気が動転してしまいますが、迷う時間的余裕は、「無い」ですから。

ちなみに、
日本では毎年50ー70人ほどがアナフィラキシーショックにより亡くなっています。
http://allergy72.jp/anaphylaxis/what.html
最も多い原因は蜂毒と薬物。食物アレルギーによる死亡は5人程度と少なくはありますが、食物でも死亡することがない訳ではない。食物アレルギーを舐めてはいけません。
最悪の結果である死亡例が5人、ということは死に至らなかったアナフィラキシー自体はもっとたくさん起こっているわけです。(残念ながら、このようなニアミスというか、ニアデス事例の統計は存在しません。)

アナフィラキシーショックによる直接の原因は、
①気道が腫れて閉塞することによる窒息死

②過度の血管拡張による血圧の低下→意識喪失&心停止(=ショック症状)
です。
2年ほど前に東京の多摩市で給食による小学生の死亡事故がありました。あれは誤食によるアナフィラキシーショックが原因です。アナフィラキシーショックは食物アレルギー反応の中でも最も恐るべき症状です。

ちなみに経口免疫療法(OIT)においても、アナフィラキシーショックは当然、ある確率で起こることが想定されます。特に数週間のうちに摂取量をMaxまであげる「急速法」の場合、アナフィラキシーは必発である、とさえいえます。だから「急速法」は必ず入院して実施します。

「急速法」に比べてゆっくりと摂取量を増量する「緩徐法」はアナフィラキシーを起こす確率は低いですが、ゼロではありません。
OITでは食べるアレルゲンの量が徐々に増えていきますから、どこかでアナフィラキシーが起こる量に達することは想定内なのです。(←必ず起こる、という意味ではありませんが、起きるのは全然不思議じゃ無いです。)
(追記)現に、Q君もエピペンのお世話になるか?迷うくらいの腹痛は2、3度起こしています。もちろん「緩徐法」に分類されるプロトコールに沿っていますが、それでも、です。

実際のところ、自宅で実施が可能のは「緩徐法」です。
「緩徐法の方が安全なので、低年齢から実施が可能です」と医師からも言われます。「急速法」は「緩徐法」ではどうしても治癒しなかった難しい子が対象になるそうで、実施可能な施設も限られます。
(関東だと「神奈川県立子ども病院」の栗原先生が「急速法」の先駆的な取り組みをなさっています。)

なので、私はQくんの体重が15kgを超えて(=3歳間近)エピペンが処方されるのを待ってから、経口免疫療法「緩徐法」を自宅で開始しました。
※エピペン注射はアナフィラキシーショックが起きた時にはほぼ唯一かつ最強の治療薬です。ステロイドの投与は効果が現れるのが遅く、全然間に合いません。それに、気道閉塞には効かないし。

ただし、「緩徐法」と一口に言っても、現在のところ「統一プロトコール」はありません。今、各施設でそれぞれ別個に「最適なプロトコール」を求めて、治験が行なわれている最中です。ですから、そういった治験(臨床試験)に入れてもらって、治療を実施するのも一つの手です。(ただし、治験に入れてもらうにも、近くに治験を実施している病院がないとできません。また、治験の対象となっているアレルゲン食品のアレルギーでないと、治験に参加できません。運良く治験を行っている病院が近くにあるようなら、是非、直接かお電話で参加可能か問い合わせてみてください。

治験に参加することのメリットは、医師に安全を担保してもらいつつ、経口免疫療法が実施できることです。一方、デメリットは、治験がランダムトライアル(RCT)の場合、非治療群(OITの場合は、除去継続群)に割り振られてしまう可能性がある、ということです。治験の場合、詳しい説明がなされますが、その時に遠慮せずに質問し、「やっぱり参加したくない」と思えば、きっぱり断っても全然構いません。患者の同意なしに治験を実施することは御法度なのです。説明不足でも医師は罰せられることがあります。

ただし、医師の指導のもと、経口免疫療法を行うには「入院しての負荷試験」が必要となります。これは、自宅でいきなり食べさせて、アナフィラキシーなどの不測の事態を防ぐためです。
ところが、「負荷試験」で食べさせる最低量をクリアできない(=アレルギーやアナフィラキシーを起こしてしまう)と、経口免疫療法やその治験に参加すらさせてもらえないのです。つまり「門前払い」されてしまうのです。
そしてのこの「最低量」は、施設ごとに異なります。

この最低量は「施設側で調節可能な量のなかの最低量」であることが多く、負荷試験の最初のハードルとなります。これがQ君にとっては超絶、高いハードルでした。Qくんのかかっている病院では卵の最低量は0.5g(←スクランブルエッグで)。

実はLuxelは負荷試験前に、自宅でこっそりQ君の限界量を計っていました。
結果、なんと、約3mg!!(←単位に注意。ミリグラムです。グラムではありません。)
こんな極極微量に反応してしまうなんて、重症もいいところです。
ほんのわずかの誤食でも死んでしまうやないけ!![むかっ(怒り)](←もちろん、このトライはエピペン片手に、ドキドキしながら実施しました。結果、かゆみと腹痛が。。。orz)

このままでは絶対に負荷試験のハードルをクリアできない。。。経口免疫療法をやれない。。。
経口免疫療法をやらなければ、Q君は一生、卵を除去する生活 & 誤食による命の危険にさらされる生活が続くかもしれない。
Luxelは、それは嫌でした。せっかく途中まで育てても、給食で死亡、、、とかいう悲しい結末には耐えられない。そこで「賭け」に出ることにしたのです。

これは、医師ではないけど、研究者としての「勘」による決断でした。(けっして褒められることではありませんが、一般に提供される医学の限界を超えていた場合、決断できるのは親だけだと思います。)

「我が子の成長に、医学の進歩が間に合わない」
そういうことはよくあります。
(ガンの患者さんでも似たようなことが起こっています。「海外では使用できる抗がん剤が、日本ではまだ認可されない」「証拠の乏しい新しい治療法を試したいが、主治医が標準治療以外はYESと言わない」などです。)

私はたまたま専門が「免疫学」でした(人間で実験したことはもちろんありませんが)し、動物でアナフィラキシーを起こす実験は常日頃からやっています。
だから、Q君がアナフィラキシーを起こしたとき、「見逃さない」という自信はありました。
エピペンも揃っています。

実際に、「生活の途上でたまたま「誤食」してしまった。でも、大丈夫だった。誤植した量は○○gくらい」と親が医師に伝えると、「では、○○gよりちょっと少ない量から経口負荷をしてみましょうか。」と勧められることがあります。
医師も、自分から「食べさせて、トライしてみましょう」というのはなかなか言いにくいのですが、誤食により「許容できる量」が分かれば、これを指標に、経口免疫療法を導入してみるのは妥当、という考え方があるようです。

でも「誤食」と「テスト」、どっちが安全か、といえば、同じ量を食べるのならば、用意周到に行う「テスト」の方が安全ではないでしょうか。
そう考えて、Luxelは「テスト」に踏み切りました。

詳細は次章に続きます。

(追記2)
Luxelパパより指摘。この記事だけ読むと「卵からトライしたみたいに見える」そうで。
実際には、
生活史上、アナフィラキシーを起こしたことのなかった牛乳からはじめ、
牛乳→小麦→卵、の順で解除していきました。


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